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この記事を読むとわかること
・300社を超えるグループ企業の会員情報を1つに束ねるイオンの挑戦
・顧客ニーズに応える一貫性のあるプロダクトを生み出すにはPdMが必要不可欠
・外部で活躍するPdMが自社で活躍するのは幻想。エンタープライズ企業では、社内育成が最適解である
近年、プロダクト開発においてニーズが高まっているプロダクトマネージャー(以下、PdM)。エンタープライズ組織では、プロダクトの戦略策定のみならず、新たな価値創出のための施策検討やスキルトランスファーなど、PdMが組織変革を先導する役目を担うことが求められています。
イオンでは、店舗の現場から上がってくる多様なニーズに応えるために、プロダクトの「価値」よりも「機能」に寄った開発をこれまで行っていました。そうした状況を打破し、顧客優先主義をもとにユーザーニーズに沿った価値を提供していくため、2024年4月からイオンスマートテクノロジーの組織体制を大きく変更しています。
今回は、内部からPdMを抜擢する重要性やプロダクトドリブンな組織変革のチャレンジについて、イオン株式会社 CTO兼イオンスマートテクノロジー株式会社 CTOの山﨑 賢が語ります。
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【目次】
独自性や独立性を重んじるイオンの企業カルチャー、故に会員情報などが分散してしまう側面も
はじめまして。イオンスマートテクノロジー株式会社 CTOの山﨑と申します。私がイオンに入社したのが2023年4月でちょうど1年が経ちました。
職歴としてはYahoo! JAPANでエンジニアを務め、リクルートでは開発責任者を担っていました。その後、ベンチャー2社でCTOを経験して現在に至ります。
2025年度の営業収益が10兆円、グループ従業員数が約57万人を抱えるイオンは1758年に創業しました。企業の歴史としては、積極的に吸収合併を繰り返し、規模を拡大してきたのがイオンの特質になっています。ダイエー、カスミ、マルエツ、キャンドゥなど、多くの企業が合併してイオンというブランド全体を作り上げています。
イオンの企業カルチャーを説明すると、こうした子会社にイオンの慣習を押し付けるのではなく、独自性や独立性を重んじる社風が根付いています。
ここでイオンの内情をご説明したいと思います。
イオングループは小売企業であり、今まではWebやアプリケーション開発といったITの知見が少ない企業でした。現在は仲間集めを協力に推進し、グループ全体のデジタルシフトに挑戦しています。また、イオングループは小売事業を主幹にしつつも、スポーツクラブや映画館、薬局、保険、銀行など、グループ全体の事業は極めて多様であり、独自性が強いのが特徴です。
先述したように、イオングループは個々の事業の独立性を重んじる文化を持っており、それぞれの会社の文化や慣習をベースにビジネスを展開している状況になっています。こうしたなか、イオングループ各社が持つIDやデータを統合することで、グループ全体のシナジーを生み出し、お客さまに新しい価値を届けるためのDXに取り組んでいます。
2021年にはイオングループ内の事業会社が持つ膨大なIDと購買データを集約した「iAEON」をリリースし、各社に分散していた会員情報を1つに束ねることにチャレンジしています。

一貫性のあるプロダクトに導くためには「門番」が必要だった
しかし、DX化を進めていくなかでの課題も生じています。小売事業を主軸にしているイオンにおいて、店舗で働く店員の方々は「どうすればお客さまに喜んでいただけるか」、「どういったサービスを提供すれば、また来てもらえるのか」と日々考えながら、現場でお客さまと向き合っています。驚くことに、イオングループ全体では300を超える多種多様な企業が存在していて、いわば300通りの顧客主義やホスピタリティ、機会価値向上を考えているわけです。
こうした状況になっている手前、グループ全体のデジタルシフトを担うイオンスマートテクノロジーに「業界固有の要件」や「背景のわからない機能追加要望」、「納期だけが先に決められるプロジェクト」などが集中してしまうことが起きています。ある種、中央集権的にID統合とデータ基盤の構築を行う立場からすると、顧客の顔が見えにくいレイヤー構造ゆえに、顧客を置き去りにした仕様や、増築・改築を繰り返した一貫性のないプロダクトになる可能性もあるわけです。
ID統合という手段を打ち出しているなかで、結果として出来上がったプロダクトが、顧客の望まないものになってしまったら元も子もありません。店舗などの現場は顧客と接点を持ち、価値を届けることは十分にできている一方、DXを通じて顧客に価値を届けるための組織が成り立っておらず、PdMをイオンの中に作っていかないと、「本当の意味で顧客のニーズに応えた一貫性のあるプロダクトを生み出せない」という大きな課題が浮上したのです。

PdM市場は活況だが、再現性が低く採用難易度も高い
PdMはここ1〜2年くらいで活況になったキーワードですが、なぜここまで注目を集めているのでしょうか。自分なりの考えとしてまず言えるのは、IT分野における機能が飽和しており、コモディティ化が進んでいることです。
さらに、機能がコモディティ化すると「心地よさ」や「体験価値」、「一貫性」といった情緒的価値の重みがより求められるようになっているため、機能追加よりもUXの方にフォーカスされているわけです。情緒的価値の創出するUXを見出すためには、多数のステークホルダーのニーズを取りまとめつつ、プロダクトの情緒的価値を守って育てる役割が必要になります。その役割を背負うのがPdMであり、今の活況ぶりにつながっていると私は考えています。

一方で、PdMは役割が曖昧かつ変数が非常に多い職種であるため、多くの人が外部の事例を欲する状況が生まれています。おそらく、活況である分野ほど、人々は成功事例に飢えていると言えますが、それはすなわち「再現性が低く採用難易度も高い」ことを意味しています。
私は外部で活躍するPdMが、突然自社で活躍するのは幻想だと思っています。同様に、外部の成功事例をそのまま自社で適用するのも困難だと言えるでしょう。
ここで、PdMに必要なスキルを挙げてみます。
前提として求められるのは顧客理解や分析能力、競合理解・市場理解、IT分野への専門性です。加えてPdMはマネージャーなので、論理的思考能力やコミュニケーション力はもちろん、プロダクトへの情熱や人を巻き込む推進力なども必要になってくるでしょう。
さらに、社内からの信頼を得てステークホルダーとの円滑な調整を行っていく上では、その会社の成り立ちや背景といったビジネスドメイン、会社で働く従業員の特徴、社内の利害関係などを高い解像度で理解することも重要になります。

各スキルを図で解説すると、一番上は外部のイベントへ参加したり参考本を読んだりすることで習得できると思います。真ん中は努力できる部分と、持ち前の素養が必要となる部分があります。一番下は経験年数や社内実績が非常に問われるスキル領域となっています。
PdMは内部登用が最適解。足りないスキルは後付けで学習する
そのような中、イオンというドメスティックな会社で、300社のいろんなビジネスドメインが存在し、その要求を取りまとめる人材は、おそらく社内から育てるのが最適解だと捉え、PdM候補を選定していきました。

イオンスマートテクノロジーでは、2024年4月から大きく組織構造を変えました。今までは縦割り組織によるプロジェクト制を敷いていましたが、それをCOOとCTOで完全に職務権限を分けました。
COO配下には、ビジネスドメインの専門家であるPdMを社内から登用し、各PdMが管轄プロジェクトに対して、CTO配下のバックエンドやフロントエンド、QAなどの専門チームから、プロジェクトの特性に応じてメンバーを集結させて成功に導くやり方に変えていく予定です。
今回のセッションをまとめると、多くの企業は“多様性の固まり”だからこそ、現場のニーズをそのまま反映すると混乱を作る原因となります。またPdM市場は活況である一方で、環境依存度が高く、ある環境での活躍や成功事例が他の環境においても再現性があるわけではないということです。そのため、PdMは内部から育成するのがひとつの最適解だと考えられるでしょう。
「専門性は外部から学ぶ。人材は内部から育てる」このような覚悟を持つことが重要になります。そして、人が育つのを待つより、育つ環境を作るほうが早いため、「覚悟を決めたら組織を変える」という意識を持つのも大切なことです。
新しく選定したPdMには、たとえ経験のないことがあっても、一緒に協力しながらやっていこうというスタンスで権限を移譲していくと良いでしょう。その会社のビジネスドメインや社内政治を鑑みた上での調整に長けた人材であれば、足りないスキルは後付けで学習して習得していけばいいわけです。
「銀の弾丸はない。覚悟を持って成長しよう」という、ある意味で泥臭く地道にやっていく考え方こそ、今のイオンにも必要だと捉えており、今後も新しい組織体制のもとでイオングループのDX推進に貢献していきたいと思っています。

登壇資料はこちら
イオングループではエンジニアだけでなく、PdMやPjMの方が活躍できる場面もたくさんあります。
情報交換をしてみたい、いつかチャレンジしたいという方はぜひキャリア登録もお願いします。カジュアル面談も実施しておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう!
※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。
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