
この記事に登場している人
U.S.M.Hデジタル本部
U.S.M.Hデジタル本部
山本 慎一郎
Shinichiro Yamamoto
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 執行役員 デジタル本部 本部長
石川県生まれ。1980年代に都内スーパーの現場からキャリアをスタートし、小売のシステム部門を経験。1989年に小売業向けコンサル、SIを共同起業。1995年にローカルSMに入社し、基幹システム更新などに携わる。2005年からコンサル企業で小売業向けコンサルに従事。2014年、株式会社カスミ入社。U.S.M.Hは2015年の設立から携わり現在に至る。
新川 太陽
Taiyou Shinkawa
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 デジタル本部 システム運用部
大阪府生まれ。2003年にジャック株式会社(現イオンイーハート株式会社)にアルバイト入社。店長・エリアマネージャーを経験。社員登用、別会社でのストアオペレーション企画、IT導入などを経験。2013年からイオンアイビス。2025年春からU.S.M.Hに入社。保有資格は情報処理安全確保支援士、応用情報処理技術者、基本情報処理技術者、調理師、ラーメンソムリエ。
山本 慎一郎
Shinichiro Yamamoto
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 執行役員 デジタル本部 本部長
石川県生まれ。1980年代に都内スーパーの現場からキャリアをスタートし、小売のシステム部門を経験。1989年に小売業向けコンサル、SIを共同起業。1995年にローカルSMに入社し、基幹システム更新などに携わる。2005年からコンサル企業で小売業向けコンサルに従事。2014年、株式会社カスミ入社。U.S.M.Hは2015年の設立から携わり現在に至る。
新川 太陽
Taiyou Shinkawa
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 デジタル本部 システム運用部
大阪府生まれ。2003年にジャック株式会社(現イオンイーハート株式会社)にアルバイト入社。店長・エリアマネージャーを経験。社員登用、別会社でのストアオペレーション企画、IT導入などを経験。2013年からイオンアイビス。2025年春からU.S.M.Hに入社。保有資格は情報処理安全確保支援士、応用情報処理技術者、基本情報処理技術者、調理師、ラーメンソムリエ。
この記事を読むとわかること
・U.S.M.Hの情報システム部の「店舗ファースト」な価値観
・食品スーパーマーケットの情報システムに求められるものの大きな変化
・U.S.M.Hの情報システム部が目指すスーパーマーケットの情報システムのあり方
イオングループの首都圏におけるスーパーマーケットの企業連合であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)。マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、いなげやという出自も展開エリアも異なる4社を傘下に持ち、667店(2025年12月5日時点)を首都圏に展開しています。
2026年3月にはダイエーもグループインする予定の同社では、ITシステムはどのようなチームによりどんなカルチャーの下で開発されているのでしょうか?同社のITシステム部の今とこれからを伺います。(聞き手・執筆:プレーンテキスト 鹿野恵子)
【目次】
「求められるもの」がこれまでと全く変わりつつある
——U.S.M.Hといえば、イオングループが首都圏に展開するスーパーマーケット4社の連合体でありながら、独自の店内決済システムである「Scan&Go ignica」や、食品宅配サービス「Online Delivery」など独自のサービスの開発も行ってきたという一面もあります。今後イオン本体のITシステム基盤との統合も控えた過渡期にあると伺いました。現在の御社の情報システム部の位置づけとビジョンを教えてください。
山本2023年頃までは、イオングループ全体がトライ&エラーの時期で、非常に速いペースで各事業会社がお客さま向けのソリューションの開発を行ってきました。
スマートフォンが普及し、小売業が単なる店舗での販売からOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの購買行動が融合すること)へと移行するなか、私たちは何もない原野で「ないものは作る」という精神でもって、お客さまの利便性向上のため「Scan&Go ignica」や「Online Delivery」、独自POSなど、さまざまなソリューションを実験的に開発してきました。
一方、2022年頃から、イオンスマートテクノロジー(AST)が中心となり、イオングループ共通システム基盤の整備がスタートします。グループ全体として、試行錯誤は終わりを迎えつつあり、これからはシステム基盤に近い部分の開発はASTに任せ、私たちイオングループの事業会社は小売業固有のデータを使いながらどうやって小売業としてのオペレーションを回していくかに注力していくべきだと考えています。

▲「Scan&Go ignica」は、お客さま自身が商品をスマホでスキャンし、アプリで決済。レジ待ちの時間が減少するため、混雑を回避し、買い物時間の短縮が期待できるサービス。
——小売業固有のデータ、オペレーションとおっしゃいますと?
山本小売業に限ったことではありませんが、ビジネスは、予測、計画、実行、レビューで回っていくものです。
そのなかでも、仮説に基づいて1店舗1店舗の現場を動かすような「実行」の部分をつかさどるシステムは共通化していいと考えています。ただ、データを使って予測をしたり、実際に事業のオペレーションに活用できるような形に再構成する部分は、事業会社が行うべきです。
食品スーパーマーケットは非常にドメスティックな事業で、比較的競争が少ない環境におかれてきました。この20年間人件費も大きくは上がらず、物価もほぼ横ばいに推移しています。
しかし近年はインフレに伴い物価、人件費をはじめあらゆるコストが上昇している状況です。一方では人口も減少しています。今後は小売業も、製造業並みの細かいマネジメントが必ず必要になるはずです。
たとえばこれまでは「1時間で、このあたりの商品を品出ししておいてね」というざっくりとした指示でも許されてきましたが、今後は「10分間で作業Aと作業Bと作業Cを完了して作業報告をしてください」と個別具体的な指示になるはずです。作業には個人による能力差があるので、そこも加味したマネジメントができないと、計画的に作業が進められなくなります。
また、小売業と製造業の最大の違いは、製造業は計画生産できる一方で、我々小売業にはお客さまがいるということです。お客さまの来店や購買の状況に合わせて作業を行う必要がありますし、急な天候の変化や競合状況などの外的要因で来客数も作業工数も変動します。
ですから製造業よりさらにクイックなレスポンスが求められ、アジリティの高いオペレーションが要求される。同時に従業員の働きやすさもさらに求められるようになるなど、小売業の情報システムは非常に難易度の高い状況に置かれています。
何が要求されているのか、何をなすべきなのかは、過去とこれからは大きく違うのです。

おそらく日本の小売業では前例がない規模のマイグレーション
——大きな変革のタイミングということですね。
山本はい。私たちはより強固な情報システム部門を目指し、2025年春に事業会社4社(マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、いなげや)の情報システム部のメンバー総勢約90名ほどを各事業部からお茶の水の拠点に集約しました。メンバーの構成は、企画・開発が30名ほどで、他は事業会社各社のシステムの日々の運用に携わっています。
個々の事業会社はシステム基盤を持っていますが、U.S.M.Hとしてはこれまで独自の基盤を持っていませんでした。しかしこれからは、U.S.M.Hとしてのシステム基盤や、セキュリティを含めたガバナンスを作っていく必要があります。
ネットワークシステムも4社で異なるものを持っていますが、最終的にイオン共通のものに統合するとしても、どう移行していくかなどを検討していく必要があります。
そういった基盤の部分の統合の話と、過去作ってきた「Scan&Go ignica」やPOSなどの運用もあります。これらを今後共通システムに合わせていくのであれば、その移行作業も必要でしょう。
移行先でも移行元でもビジネスは毎日変化します。新しいサービスを作りながら、既存のものも変化させ続ける必要がある。さらに事業会社の数だけやることがあります。安全性を確保しつつ、迅速なマイグレーションを実行し、現場には混乱をもたらさないというような、非常に難易度の高い移行を求められている。
おそらく日本の小売業で、この規模のスーパーマーケットのシステムを、4社分まとめてマイグレーションするというのは、前例がないのではないかと思います。
「調理師免許も持つエンジニア」。さまざまな背景持つメンバーによる混成チーム
——そのようなチャレンジングなマイグレーションを控えつつも、皆さんとても穏やかな雰囲気でいらっしゃいますね。開発の現場の体制はどのようなものなのですか
山本これまではオフショア開発が中心でしたが、これからはきちんとガバナンスを構築した上で、自社でもある程度のイニシアティブを持って開発を進める必要があると考えており、体制を構築している最中です。
まずはプロジェクトを可視化する必要があると考え、週次で1時間半ほどのMTGを開催し、今会社としてどのようなプロジェクトを動かしているのかを社内で共有するという取り組みをはじめました。
主だったメンバーは、隣のチームが何をしているのかに関してはほぼ把握できる形になっています。システムトラブルが発生した場合のエスカレーションや、その後処理も含めて共有する体制ができつつあります。
——かなり多彩なメンバーが集まっているそうですね。
山本もともと3社から集まってできた会社ということもありますし、現場からジョブローテーションで来た小売出身のメンバーと、前職がデジタル系の仕事というメンバーの混成部隊で、ここにいる新川をはじめメンバーのバックグラウンドは本当に様々ですね。
新川開発部隊は、ITが好きで、店のことも知っている人が多い。バランスが取れた部隊だと思います。
私はまだイオンがジャスコと呼ばれていた時代に、グループの飲食業の会社にアルバイトで入りまして、店長などを経て正社員登用され、途中からITに片足を突っ込み今に至るという流れです。調理師免許も持っています(笑)。この春からU.S.M.Hに入社し、現在はクラウドプラットフォームの管理を担っています。
——調理師免許を持つエンジニアさんというのは素敵ですね。開発チームで大切にしている価値観はありますか?
新川皆、店舗という現場をとても大切に考えています。店舗の方が心地よく働けるようにというのが価値観として最優先です。ただ、同時に、テクノロジーから店舗の業務に改革を与えるという側面もありますから、その両方に配慮していきたいですね。
山本U.S.M.H自体がまだ創業10年ぐらいの若い会社で、割と壁がない。そして多彩なメンバーがいるのが特徴的だと思います。これだけ多彩な人材がいて、事業会社でお客さまファーストで働いているのですから、それをエンパワメントしない理由はありませんよね。
——業務におけるオンラインとオフラインの比率はいかがでしょうか?在宅勤務などは取り入れられていますか?
山本オンラインと対面が常に併存していますが、先にお伝えした週1回の定例MTGは主要なメンバーは対面で参加し、オフラインでコミュニケーションを取るように努めています。日頃は、ハードウェアのメンテナンスもあれば、店舗に足を運ぶこともあるので、常に拠点にいるという仕事の仕方ではありませんが、みんな結構出社もしていますね。
新川基本的に働く場所は自由で、自分の作業をするだけであれば在宅でも全く問題ありませんし、リモート会議の風土も整っています。出社のプレッシャーもないので、エンジニアにとっては働きやすい環境だと思います。
——チームメンバーの皆さんの成長を促すためのイベントや、学習機会の提供などについてはどうお考えでしょうか?
山本「POS」「インフラ」「クラウドプラットフォーム」というように、メンバーそれぞれが違う分野の技術を持っています。そのように専門分野が異なるメンバーに対し、今後は「(自分が持っていない)技術的な背景を学習する場」と「現場のオペレーションマネジメントに関する技術」を学ぶ場の両方を設ける必要があると考えています。デジタル系、小売系の両方の人材がいるのは非常にいい点で、学びあうことができる環境があります。
帳票の出力が簡単になった今、大切なのは「どんな問題を発見できるか」
——今後小売業の情報システム部としてどのようなことが重要になると思いますか。
山本かつては「コンピューターのパワーが小さく、少量のデータをプログラムに読み込ませて帳票を出力する」時代でした。当時は「帳票を出せたらすごい」時代だったのですが、現在は高速化、大容量化、リアルタイム化が進み、データ収集・加工の難易度も下がっています。
一方で、1つの帳票があったとしても、人が見る数字はそのうち6%にすぎないといわれています。どんなに細かい数字をたくさんならべても、結局見るのは全体で予算を達成したかどうかだけ。つまり、重要になってくるのは「どの数字を見るか」なんです。
帳票・グラフは誰でも出力できるようになったので、そこからどんな気づきを得られるのかというところの検討に、もっと時間をかけるべきだと思います。もっと言うと、どのように問題を発見できるかということが要請されるのではないでしょうか。
新川私はそのための「データプラットフォームの構築」を目指していきたいと考えています。
店舗では、発注、在庫、販売したPOSのデータなど、「売れた事実」は分析できても、誰がどの商品を手に取ったのか、何を戻したのか、お客さまの店内での動線などはいまのところはまだデータとして取得できていません。そのようなデータを取得して、分析できるようなことに内製で取り組めたら面白いと考えています。
それと、ダッシュボードは、100人の従業員がいれば100通りあってもいいものなので、各自の仮説に合わせて構築し、納得いかなければ壊すというようなことができるようなプラットフォームが作れないかと思案しています。

山本デジタル本部としては、データをどの粒度まで準備するかの検討が必要です。お客さまの購買データの粒度もそうですが、従業員の動線データなども取得できれば、動線を変えることで生産性を上げるなどの取り組みも現実のものになるかもしれません。
——データプラットフォームの確立が一つの山になりそうですね。イオン共通基盤を使うとして、今後はどのようなプロジェクトが待ち構えていますか?
山本まずはマイグレーションの成功でしょう。今私たちが目指しているのは、「せーので飛び移る」ような過去型のマイグレーションではなく、「安全性を高めて、なおかつスピードを上げて、でも現場には混乱をもたらせない」、段階的かつ連続的な移行です。
移行のなかで大きな課題の一つとなるのが、事業会社間で異なるシステムのコード変換です。このコード変換を人力ではなく、ELT(Extract, Load, Transform)などの技術や生成AIを活用し、クラウド上で実行することにより、移行の安全性と速度を高めたいと考えています。
「ポンと飛び移るのではなく、連続的にずっとシステムが変わっていっても安定的なアウトプットが得られる」ような仕組みを、データ基盤を活用して実現していきたいですね。
デジタルの力で「鳥の目」「虫の目」を両立し、営業に貢献する
——最終的にチームでお客さまや現場に対してどのような価値を提供していきたいと思われますか?
山本U.S.M.Hには約660店舗があり、それぞれの店舗はエリアごとの特性を持っています。しかし、これまではその店舗のエリア特性を生かした個別の施策を打つことはできませんでした。いくつかのパターンは作れたとしても、基本的には全店一律の施策しか展開できなかったのです。
デジタルを活用することで、もっと解像度の高いデータを活用しながら、1店舗1店舗に対してきめ細やかな施策を提案し、営業に直結するような貢献をしていきたいと考えています。
これを「虫の目」とするならば、「鳥の目」、つまり全体を俯瞰してモノの動きや流れを見ることで、企業全体の効率化を図ることも必要です。4社集まったことで、スケールメリットも得られます。
たとえば今は物流拠点が19か所あって、それぞれの事業会社ごとに配送をしていますが、共同物流などを実施することで効率的な物流網に再構築できるかもしれません。そのための仕組みづくりは非常に大変ですが、私たちが担う意義があります。「虫の目」と「鳥の目」の二つの両立が重要です。
新川私の住んでいる近所には、カスミもマルエツもいなげやもあって、カスミはローストビーフがとてもおいしいし、マルエツはとても新鮮な野菜を扱っている。いなげやは総合的にいろいろと揃っていて、日々の買い物がしやすいという特徴を感じています。
何が言いたいかというと、私たちスーパーマーケットって日々のお客さまの生活にものすごく密着した業態だということです。U.S.M.Hはいわば「関八州最強のスーパーマーケット集団」を目指しています。
4社集まれば、毎日の地域の方々の「食」をより深く知ることができる。その価値は非常に大きいはずです。「お客さまの日々の生活に寄り添えるような店舗オペレーション」を実現できるようなシステムを開発していきたいですね。
山本4社の強みは徹底的に活かし合い、逆に弱みは4社で束ねて解消していく。それが、この統合体としての最大の使命なのだと思います。

——地域の毎日の食と生活を支えるシステム作りは難易度は高いもののやりがいもとてもありそうですね。本日はありがとうございました。
イオングループでは一緒に変革に挑んでくれる方を募集中です。
どんなことをしているのか気になる方は、お気軽にご連絡ください。カジュアル面談も実施しておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう!
※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。
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