
「イオングループ内にアジャイル開発の根を広げていきたい」 ゼロから始めたスクラム導入・定着化の軌跡|イオン・エンジニアインタビュー
2024/4/25
この記事に登場している人
翁長 聡史
Satoshi Ounaga
イオンスマートテクノロジー株式会社 iAEON開発ディビジョン iAEON開発ユニット iAEON開発チーム スクラムマスター
新卒で入社の銀行系システム子会社では、ホスト系システム開発を経験後、銀行グループ内会社におけるアジャイル開発推進などを担当。
2022年9月にイオンスマートテクノロジー入社後、ゼロからのアジャイル開発(スクラム)導入・推進をスクラムマスター/アジャイルコーチとして絶賛取り組み中。スクラムがもたらす価値を信じてスクラムに挑み続けている。お気に入り店舗はイオンレイクタウン。
Scrum Alliance 認定スクラムプロフェッショナル-スクラムマスター(CSP-SM)、認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)
この記事を読むとわかること
・フロントエンド開発チームのスクラム体制、スプリントの動き
・導入から1年で2チームにスケール化、スクラムを定着させるためにやったこと
・Be Agileを目指して…スクラムマスター・翁長の熱い想い
イオンスマートテクノロジー(AST)の翁長聡史は、フロントエンド開発チームのスクラムマスターとしてチームへのアジャイル開発導入を推し進めてきました。翁長は、約1年半にわたるスクラム導入・定着の取り組みを“60点”と評価します。協力会社への開発依頼がメインだった状態からどのようにして社内でのアジャイル開発を定着化させてきたのか、翁長に聞きました。
【目次】
3名の社内メンバーからスタート、増員後は2チーム化してLeSSのプラクティスを導入
——翁長さんの現在の業務内容について教えてください。
翁長スクラムマスターとして、iAEONアプリ開発へのアジャイル開発導入を進めています。
フロントエンド開発チームは現在、プロパー社員とパートナーを合わせて約20名の体制です。2022年9月までのiAEON開発はすべて協力会社(2社)への開発依頼で行っていましたが、2022年10月に内製チームを組成し、「電子マネーWAONのiAEON登録機能の構築」という比較的難易度の低い要件からスモールスタートでスクラムを社内で導入し、成功体験を少しずつ積み上げてきました。今は2チームまで増えました。ただ、2チームのスクラムマスターを自分が兼任しているので、スクラムマスターの後任育成にも着手し始めています。

——具体的にどのようにしてスクラムの導入を進められてきましたか。
翁長社内3名の開発メンバーとともにスタートしたのですが、当時は誰もアジャイル開発の経験がなかったため、まずはアジャイル開発とは何か、スクラムとは何かというところから学ぶ初期トレーニングの仕組みをつくって実施しました。その後は、実際に開発を行いながら、開発プロセスの習得をしたり、振り返りによるプロセス改善やベロシティの計測を行ったりと少しずつ進めてきました。
2023年3月にはメンバーを増員し、同年8月からは山﨑CTOの方針でスケール化を目指して2チーム5~7名体制で内製開発を行っています。もともと1チームだった6名のメンバーをスキルや性格などを考慮して2つのチームに分け、私がスクラムマスターとして両方のチームに関わっているという形です。また、現在は3チーム化の準備も進めています。

——2チーム体制へ移行される際に意識されていたことはありますか。
翁長まったく新しいチームを別に立ち上げるという選択肢もありましたが、もともとあったチームの"色"をなるべく残したいと思っていたので、6名を均等にそれぞれのチームに配置して、新しいメンバーが入ってきても現メンバーがチームビルディングを主導できる体制になるよう意識しました。実際に新しく入ってきたメンバーに対して既存メンバーの誰とペアにすれば相性よく回していけそうかなど、メンバーの配置についても細かく考慮したことで上手くいった感覚はあります。
また、スケール化するにあたっては、世の中的に実績のある手法をある程度踏襲すべきと考えていたので、LeSS(Large-Scale Scrum)のプラクティスを分割後のチームに適用していきました。
——実際にLeSSのプラクティスを導入してみて、馴染まなかったところなどはありませんでしたか。
翁長LeSSの考えでは、ひとつのプロダクトバックログに対して、2つのチームはそれぞれ別のプロダクトバックログアイテムを担当することになります。POからすると開発チームが何チームあってもそこまで気にならないかと思うのですが、開発チーム側はチームとしてのある程度の独立性がないと分割した意味がないですよね。とはいえ、チームの関係性が過度に疎結合とならないようにも、意識しています。
そこで、2チームで一緒に活動するイベントと、チームごとに裁量を与えて行うイベントとを分けて進めるようにしてみました。2チーム横断でまずスプリント計画の第一部を実施し、何をやるのか、どちらのチームが行うのかを決めて、第二部ではチーム内での分担やメンバー1人1人のベロシティの範囲内で遂行していくための計画を各チームで行います。

——1スプリントの動き方はどのようになっていますか。
翁長期間は2週間で、初日にスプリント計画を行います。ただし、直前のスプリントまでにプロダクトバックログの下見の場にビジネス側のプロダクトオーナーに入ってもらい、次のスプリントで実施すべきことを確認しています。さらに、「下見の下見」として、下見で確認したいことを開発メンバーで整理しておく場も設けています。スプリント計画のプレ枠も設けているので、これによりある程度当たりが付いている状態でスプリント計画を行えます。スプリント計画は計画FIXをメンバーで合意するための第三部までを設けており、早ければ2日目の午後くらいから実際に開発をスタートできます。
また、2チーム化したタイミングで全体での振り返りが必要になったため、LeSSのプラクティスの1つであるチーム横断でのオーバーオールレトロスペクティブを導入しています。オーバーオールレトロスペクティブには、プロダクトオーナー代理(PO-Px)全員と開発チームの代表者、スクラムマスターが参加します。
アジャイル開発の価値を理解してもらうための工夫
——この1年半のスクラム導入の取り組みに対して、点数を付けるのであれば何点くらいになりますか。
翁長高く見積もって60点くらいでしょうか。スクラムチームのメンバーは皆優秀で、それまでやってきた経験やプロセスがあるにもかかわらず、大きな抵抗なくスクラムを受け入れてくれたのはまず大きなポイントでした。
最も評価できるのは、これまでスクラムのイベントを1つも欠かすことなくやれてきている点です。障害対応などで参加できるメンバーが限られたり時間を変更したりすることはあっても、スキップしたことはありません。皆が当たり前のようにすべてのイベントに参加しています。リズムよく一定の間隔で繰り返していくという仕組みができあがってきており、スクラムでの開発プロセスが定着してきているように感じています。

——「スクラムが定着した」と実感できる瞬間は、どんなときでしょうか?
翁長たとえばデイリースクラムでは、スクラムマスターではなく開発メンバーが輪番制でファシリテーションを担当していますし、自分に順番が回ってきたときには共有すべきことをきちんと伝えられるようになっています。1年半続けてきたなかで、自分たちの活動として自律的に進められるようになったという印象です。また、デイリースクラムとは別に、ペア・トリオ・カルテットミーティングなども自発的に行われており、2チーム化後に入った新しいメンバーも上手くキャッチアップできているように思います。
——こうして自律的に回るようになったのには何か理由があるのでしょうか。
翁長敢えてあげるとするならば、スクラムやアジャイル開発の価値をメンバーが理解してくれているからだと思います。
——価値を理解してもらうための工夫は何かされましたか。
翁長はじめの段階で、アジャイル開発の基本原則である「アジャイルソフトウェア開発宣言」が示す4つの価値とアジャイルマニフェスト(12の原則)、そして、アジャイルに取り組むべき理由”Why Agile?”を丁寧に説明しました。また、導入半年後には、実際に取り組んでみてこれらの価値をどう感じているか確認するフォローアップトレーニングを実施しました。
フォローアップトレーニングでは、4つの価値と12の原則が自分たちの活動にどう活きているか、実際の開発で意識したシーンやそう思った理由を書き出してもらい、”Why Agile?”についても、実際の経験をもとに改めて考えて直してみてもらいました。各メンバーの意見に賛同したり共感したりする人も多く、アジャイル開発の価値について一定の理解が得られていると感じています。

「小売でアジャイルな開発をやりたいならイオンで!」を目指す
——翁長さんの今後の展望についてお聞かせください。
翁長アジャイル開発は”Don't just Do Agile, Be Agile”といわれているように、プラクティスの通りにただやればいいというわけではなく、そうした状態になることを目指すべきとされています。iAEONチームとしても、メンバーが自律的に取り組めるようになってきたところではありますが、まだまだ”Be Agile”にはなりきれていないと考えています。
自分がルールブックやガイド役にならなくても、フロントエンド開発チームのなかでスクラムが回るようになっていく状態が理想です。そして、”Be Agile”の成果を開発メンバーだけでなく、ビジネスサイドのメンバー、そしてお客さまにまで実感してもらえるよう、チームの育成を後押ししていきたいです。将来的には、イオングループ内にまでしっかりとアジャイル開発の根を広げ、「小売でアジャイルな開発をやりたいならイオンで!」と言えるような仕組みづくりを目指していきたいですね。
——ありがとうございました!

イオングループでは一緒に変革に挑んでくれる方を募集中です。
どんなことをしているのか気になる方は、お気軽にご連絡ください。カジュアル面談も実施しておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう!
※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。
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