「開発経験ブランクあり」のヘルプデスク担当者が生成AIでJiraダッシュボードを自作 | イオン Agentic Coding Study No.1

「開発経験ブランクあり」のヘルプデスク担当者が生成AIでJiraダッシュボードを自作 | イオン Agentic Coding Study No.1

2025/8/22

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この記事に登場している人

添田 由華

Yuka Soeta

イオンネクスト株式会社 IT部 ユーザーサポートグループ リライアビリティチーム CRE
新卒でソフトウェア開発企業に入社し、金融・生保業務システムの設計からリリースまでを担当。営業事務とシステム開発の両面を経験後、通信系企業へ転職し、物流やコールセンター業務、エネルギー関連部門でのスタッフ管理や業務効率化など、ITから離れた業務に従事。2023年6月より現職。

    この記事を読むとわかること

    ・開発経験にブランクのあるヘルプデスク担当者が、生成AIを活用してJiraダッシュボードを自作し、業務課題を解決した事例。
    ・Jiraの標準機能では可視化できなかった「一次応答率」というKPIを、リアルタイムで監視できるダッシュボードの必要性と実現方法。
    ・専門スキルがなくても生成AIで個人の壁を越え、現場主導の課題解決を加速させるにはどんな姿勢が重要なのか

    デジタルトランスフォーメーション(DX)の主役はエンジニア・プログラマのような一部の専門家だけではない。イオングループでネットスーパー事業「Green Beans」を展開するイオンネクスト株式会社では、開発にブランクのあったメンバーが、生成AIを用いて業務課題を解決した。チケット管理システム「Jira」の標準機能では見ることのできなかった重要なKPIを、いかにして自らの手で可視化したのか。本記事では、生成AIが個人のスキルの壁を越え、現場主導の課題解決を加速させるリアルなストーリーをお届けする。

    【目次】

    イオンネクストは、イオングループが提供するネットスーパー「Green Beans」の運営を担う事業会社である。最新のロボティクスとAIを駆使した巨大な物流センターを国内に構え、顧客に新たな買い物体験を提供している。

    今回話を聞いた添田由華さんが所属するのは、同社のCREチーム。CRE(Customer Reliability Engineering)とは、顧客の信頼性を技術の力で向上させる役割を指す。添田さんのチームは主に社内のヘルプデスク業務などを担当し、日々発生する様々な問い合わせやシステム上の課題解決に取り組んでいる。 その業務の中心にあるのが、Atlassian社が提供するチケット管理システム「Jira」だ。

    1.  課題:本当に見たい数値が見えない

    前述したように、イオンネクストCREチームは、ヘルプデスク業務で利用しているチケット管理システム「Jira」を活用していた。しかし標準機能で作成できるダッシュボードでは、業務品質を測る重要なKPIである「一次応答率」(ヘルプデスクにチケットが届いてから担当者が対応を開始するまでの時間)をリアルタイムで監視できないという課題を抱えていた。また、目標未達の原因を深掘り分析することも困難だった。

    2. 何を実現したかったのか:リアルタイムで監視できるダッシュボード

     チームが常に意識したい「現在の一次応答率は90%を超えているのか」という数値を、リアルタイムで監視できるJiraダッシュボード、および各チケットの応答時間を一覧で表示し、目標を超過したものが一目でわかるような機能を実現したいと考えていた。

    また、将来的にはインシデントが起きてから完全に解決するまでの総工数も可視化したいというニーズがある。

    3.  誰が実現したのか:イオンネクストCREチームの添田由華さん

    その課題に立ち向かったのが、イオンネクスト株式会社のCREチームに所属する添田 由華さんだ。新卒でソフトウェア開発企業に勤務経験はあったものの、当時使っていたのはCOBOLだった。その後は長く開発業務から離れており、開発経験にブランクがあった。

    4.  どのようなツールを利用したのか:社内勉強会で知ったCline

     後述する「もくもく会」で知った、AIプログラミングツール「Cline」(生成AI)を使用した。

    5. どんな工程で作ったのか:小さな成功をきっかけに

    生成AIとの出会いは、社内のエンジニアが集まる「もくもく会」。AIプログラミングツール「Cline」が紹介され、添田氏がその可能性を感じたのがきっかけだった。

    まずはClineの使い勝手や対話のコツを掴むため、「JANコード重複チェッカー」のようなごく簡単なツール開発から試行し、手応えを得た。

    小さな成功体験を経て、挑んだのが長く課題と考えていたJiraのダッシュボードだ。

    Clineに対し、「チケット対応の工数を計測するシステムを作って。チケット対応はJiraで行っています。サービスプロジェクト:ITヘルプデスク。計測したい内容:①一次応答率の達成状況、②各チケットの工数(オープンからクローズまで、ユーザー確認中からクローズまで)」といった具体的なプロンプトを入力。まずはシステムの概要を提案させ、それが自分の考えとあっているかを検討。提案内容に違和感がなかったのでそのまま作成を進めてみた。

    ▲最初にClineに投げたプロンプト

    言語としてはHTML、CSS、Pythonを利用し、実際はどう動くかわからないが、とにかく作成を進めてみた。ちなみに添田さん自身は、HTML、CSSはかじったことがあるが、Pythonについては全くの初心者だったという。

    ClineによってUIはすぐにできあがったが、利用しているのがサンプルデータだったため、次にJiraのAPIからデータを取得するためのコードを生成した。ここは試行錯誤の繰り返しがあり、業務の間を縫っての作業ではあったが1週間程度を要したという。

    ▲製作中の画面。数字が間違っている理由などを繰り返し確認してつぶして行った。

    途中で実際にほかの人にツールを使ってもらって、数値や内容の確認もしてもらったそうだ。

    最終的にリアルタイムで一次応答率を可視化し、各チケットの応答時間を一覧表示できるカスタムダッシュボードが完成した。開発に着手して1ヶ月程度のことだった。

    Jiraチケット工数計測システム

    このツールはチーム内で共有され、「一次応答率だけでなく、インシデントが起きてから完全に解決するまでの総工数も見たい」というようなさらなる改善に向けたフィードバックも得られた。

    添田さんはこの開発の経験を次のように振り返る。「AIの助けを借りて何かを制作できたことが、何よりも嬉しいです。部長から以前より要望のあったものを形にできたことも、喜びをさらに大きくしました」この開発については、IT部全体のミーティングで、発表する機会も与えられ、部内全体に共有された。

    まとめ:「身構えずに、まずはやってみるのがいい」

    専門的な開発スキルや経験の有無に関わらず、目の前の課題を解決したいという強い思いがあれば、生成AIは強力なパートナーとなりうることが示された。

    添田さんは言う。

    「最初から完璧を目指すのではなく、肩の力を抜いて、ゲームでもするような気軽さで生成AIに取り組んでみるのがいいのではないかと思います。ツールを作れば仕事が楽になりますし、AIを使って試行錯誤することで、自分の視野も広がったように感じました」

    この言葉は、生成AIを活用した新たな働き方の可能性と、まずは行動してみることの重要性を伝えている。生成AIが個人のスキルの壁を越え、現場主導の課題解決を加速させるリアルなストーリーだ。


    聞き手:イオンスマートテクノロジー株式会社 林 如弥 / 株式会社プレーンテキスト 鹿野 恵子
    ディレクション:株式会社プレーンテキスト 鹿野 恵子


    イオンネクストではエンジニアを中心としたデジタル人材の採用を積極的に行っています。話を聞いてみたい、Green Beansの事業が気になる…といった方は、カジュアル面談も実施しておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

    ※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。

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