「やるなら徹底的に」3−4ヵ月かけて仕込んだものを立て続けに発信することで「変革」のイメージを与えることに成功したイオンのDevRel戦略

「やるなら徹底的に」3−4ヵ月かけて仕込んだものを立て続けに発信することで「変革」のイメージを与えることに成功したイオンのDevRel戦略

2024/4/22

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この記事に登場している人

山﨑 賢

Ken Yamazaki

イオン株式会社 CTO 兼 イオンスマートテクノロジー株式会社 取締役 CTO
新卒で大手SIerに入社。その後、Yahoo! JAPANへ転職し数々の新規サービスの立ち上げに携わる。リクルートに入社。大規模サービスの開発責任者を兼任。ゼネラルマネージャーとして組織マネジメントを実施。
その後、複数のベンチャー企業CTOを経て2023年より現職。イオングループ全体を統括するイオン株式会社のCTOとして従事。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)理事。

    この記事を読むとわかること

    ・イオンDevRel活動開始前夜、山﨑CTOは何を考えたか?
    ・「JTC」「小売り×エンジニアリング」は実はポジティブ?!
    ・DevRelの本当の価値は「エンジニアが事業成長に寄与できるような組織の形成」、次の一手は何を考えている?

    最近はスタートアップやメガベンチャーだけでなく、IT業界以外の企業もDevRel・技術広報や採用広報に力をいれるようになってきました。エンジニアリングを通して学んだ“知識”や“経験”を、ブログやイベントでアウトプットする重要性は何なのか。

    イオンCTOの山﨑 賢が、「エンジニア組織の情報発信」をテーマに開催された「Qiita Night」にて、イオンがDevRel活動を始めた経緯や情報発信で心がけていることについて語りました。

    ▼イベント詳細
    https://increments.connpass.com/event/297014/

    ▼動画はこちら
    https://youtu.be/XLMTD9qlA3s?feature=shared

    【目次】

    立ち位置を明確にして見えてきた「JTC&レガシーならではの情報発信」

    イオンでは半年くらい前からDevRel活動を始めています。幸いにも、業界での認知が少しずつ上がってきたかなという印象ですが、私が入社した当時は、エンジニアによる情報発信のハードルの高さをすごく感じていました。そんななか、私がイオンに入ってからまず着手したのは「イオンの立ち位置を明確にする」ことでした。

    会社規模の大小と会社組織の新旧を4象限マトリクスに分けてみると、スタートアップやベンチャーと、歴史的中小企業やJTC&レガシー企業では、エンジニアの情報発信の仕方が全く異なると思っていたのです。

    言わずもがなイオンは4象限の中でも「古くて超巨大」という立ち位置ゆえに、“JTC&レガシーならではの戦い方”があるのではと考え、イオンとしてどういう風に情報発信していくべきなのかを分析していきました。

    一般的にスタートアップやベンチャーは規模が小さく、「影響力」については苦労することが多いと思います。また、技術的チャレンジに溢れている環境から、多くの情報発信の機会に恵まれているものの、真新しさや新規性という観点での効果は薄いと捉えています。

    一方でメガベンチャーは会社規模や影響力が大きく、新しい技術へのチャレンジもしやすい環境ですが、既にブランディングは済んでいることが多く、これまでにない新たな取り組みを始めても埋もれてしまうことが少なくないと感じています。

    エンジニア組織を持たないところが多い歴史的中小企業群でも、スタートアップやベンチャーと同様に影響力の面で苦労するでしょう。

    それでは、イオンの立ち位置であるJTC&レガシー企業ではどうなのか。

    私はとてもポジティブに捉えています。
    イオンというブランドの強さや認知度の高さから、世の中に与える影響力が大きく、巨大なイオングループとしての母体があるからこそ、技術的チャレンジを広く情報発信していける土壌が整っています。さらに、「小売×エンジニアリング」といったものが、世の中に存在していなかったため、そこにイオンが取り組んで情報発信していくこと自体が、希少性の高いことだと考えていました。

    DevRelやるなら徹底的に集中して取り組む

    4象限ごとのエンジニアの情報発信戦略をまとめると、歴史的中小企業群では、何かのイベントへ積極的に協賛し、その影響力を活かして対外的に情報発信していくのが適切です。

    メガベンチャーにおいては、自社でイベントを運営する力とノウハウを持っているので、そのような場で新しい技術の検証や発信を行っていくのが正しいやり方だと思っています。

    歴史的中小企業群は、基本的にスタートアップやベンチャーと同じ戦い方になるでしょう。

    JTC&レガシー企業は、“発信カルチャーのあるエンジニア文化”が根付いていないので、その点に関しては課題になる一方、一度発信を始めたら世の中に「驚き」を与えられ、注目度を高めることにもつながります。

    このようにイオンの立ち位置を分析してきたなか、エンジニアの情報発信を行うJTC&レガシー企業はほとんどなかったことから、イオンのエンジニアリングを広く世の中に伝えるDevRel活動は、非常に伸び代があると考えるようになったのです。

    「本当にうまくいくのか」
    「誰かに批判されないか」

    そういった不安を抱えながら、DevRelを立ち上げてきたのが本音ですが、DevRelの戦略を立てる上で掲げたのは「やるなら徹底的に情勢を覆すために一気呵成」ということでした。小出しでやるのではなく、イオンというブランドの強さと世の中に与える影響力を鑑みるのであれば、とにかく一気に集中してやることだと覚悟を決めたのです。
    3~4ヵ月ほど色々な人に協力してもらいながらネタを仕込み、昨年の11月末から一斉にアウトプットし、さまざまな情報発信を立て続けに行ってきました。私含め、他のエンジニアメンバーと随所にイベントへ登壇したり、QiitaでのAdvent Calendarの実施やテックブログの運営など、いろんなアプローチを繰り返してきたことで、「最近イオンがエンジニアの情報発信を頑張っている」という一定のインパクトを世の中に与えられているのではと感じています。

    反響については、幸いにもすぐに得ることができました。これは先人の築いてきたイオンのブランド力あってのことだと、あらためて再認識するきっかけにもなりました。

    日本では“JTC”がネガティブワードに捉えられていますが、ベンチャーとJTCをあえてセットで語ることで、「イオンがだいぶ変わった」というポジティブな反応を多くいただくことができました。大成功とまでは言えませんが、数ヵ月間のDevRel活動を通しての学びや気づきから、「この戦い方で合っているという実感」は得られたと思っています。

    ここまで話したものは、あくまでイオンでの戦い方ですので、企業ごとに事業フェーズやエンジニア組織のあり方が異なる以上、「自分たちのポジショニングで、どのような戦略を立てて情報発信していくのか」という思考のプロセスが大事になってくると言えるでしょう。

    ここからが本番!「古くて超巨大なイオン内部の変革」を成し遂げてDevRel活動を起点にしたサイクルをつくりたい

    その一方、JTCであるイオンならではの「やりがい」を発信する部分は、まだまだ改善の余地があり、DevRel活動自体の課題も多く残っていると感じています。現状のDevRelによる成果としては、積極的な情報発信で採用認知が広がり、エージェント経由よりもダイレクト応募の求職者の割合が増えてきています。

    その先に目指さなければならないのは、エンジニアがやりたい・発信したくなる貢献価値を伴った仕事ができる環境を整えていき、エンジニアが事業成長に寄与できるような組織の形成です。こうした組織を作ることで、イオンで働くエンジニアの市場価値が向上するほか、そのエンジニアがDevRel活動による情報発信を行うことで、それがエンジニア採用にもつながっていくというサイクルを作っていくことが大切になります。

    そういう意味では、情報発信から採用認知までは成果が出ているものの、イオン全体をテックカンパニーにしていくためには、DevRel活動を起点にしたサイクルをいかに創出するかが肝になってくると考えています。

    昨年より、社内外の協力を得ながらDevRelを立ち上げ、「小売でJTCというイオンのイメージを払拭」することはまず達成できたので、その次に見据えているのは組織改革と改善です。外部への情報発信はもとより、内部を変革していくための戦略を立て、古くて超巨大なイオンの組織をアップデートしていくことができれば、目標に掲げるDevRel活動のサイクルがうまく回っていくと予測しています。

    昔からイオンで働くエンジニアが、本当に会社が変わったと思ってもらうためには、外部への情報発信をやり切ること。そして、内部を変えていくことが大事ですが、後者の方がより難易度が高いと言えます。

    「やるなら一気に、勢いは自ら作る」

    このような思いを持ち、イオンのDevRel活動を行ってきましたが、今までは序章にしか過ぎず、本番はこれからだと捉えています。イオンの中で働くエンジニアが、情報発信に対してポジティブに捉え、「自分たちもやりたい」と思うようになる。後はそのような働きがいのある環境を、内向きに作っていくのが次のチャレンジです。

    登壇資料はこちら


    イオングループでは一緒に変革に挑んでくれる方を募集中です。

    どんなことをしているのか気になる方は、お気軽にご連絡ください。カジュアル面談も実施しておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう!

    ※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。

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