
イオンの長い歴史と複雑なシステムに挑むSREチームがつくった「信頼」を勝ち取るための4つの行動指針|イオン・エンジニアインタビュー
2024/2/19
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サービスの対象も一緒に仕事をするのも「人」―――イオンスマートテクノロジー(以下、AST)の香西俊幸はこう語ります。香西は、インフラエンジニアやSREとしてのキャリアを積んできた一方で、DevRelなどSREの領域にとどまらない活動にも多くの人を巻き込みながら精力的に取り組んでいます。
現在は、来期に向けてSREチームのミッションや行動指針を策定し、チームづくりに奮闘中です。イオングループ全体のデジタル化推進という大きな役割を担っているASTのSREチームは、どんなミッションを掲げていくのでしょうか。
SREチームのリーダーを務める香西から、チームのミッションへの想いやキャリアの話、行動力の源泉について聞きました。
【目次】
山﨑CTOからの誘いを受け、ASTでの大きなチャレンジを決意
――現在の業務内容について教えてください。
香西:CTO室 SREチームのリーダーとしてチームビルディングを担当しているほか、インフラ構成のコード化(IaC)をはじめとするインフラ自動化の推進、オブザーバビリティプラットフォームの整備など、インフラ周りの業務を中心にSREのプラクティスを会社に導入していくための取り組みを進めています。最近ではDevRelの活動にも関わっていますね。
SREチームは、ASTの社員が自分を含めて5名(2024年3月に1名入社予定)、業務委託のベンダーの方5名で構成されています。現在は来期に向けてロードマップやSREチームのミッションを策定したり、働き方を含めた会議体系などを整理したりしている段階です。
開発チームが主体性を発揮できるよう、SREチームがオーナーシップを持つ指標や領域を定義して、SREやDevOps導入に向けた共通認識を会社全体で持てるようにしていく必要があると考えています。
――ASTに入社されるまでの香西さんのご経歴について伺えますか。
香西:高校卒業後、音楽の専門学校に通いその後もアルバイトをしながらバンド活動を続けていました。バイトしていたのがコールセンターだったのですが、ユーザー向けPCの問い合わせ窓口業務だったのでPCに詳しくなったんです。その延長で、VBAを使って管理業務を行ったりバンドのWebサイトを作成したりしていました。
そうした中、結婚を機に「エンジニアを仕事にできないか」とぼんやり考えるようになり、深く考えないまま中小のインフラ系SES企業へ未経験で転職し、ネットワークエンジニアとしてエンジニアのキャリアをスタートさせました。
次に入社した事業会社ではインフラエンジニアとしての仕事のほか、データセンターの契約から、社内用ツールやWebシステムの開発、情シスなどの幅広い業務を担当し、プレイングマネージャーとしてチームをリードしました。その後の会社ではSREというロールで働くようになり、前職のトラストバンクには1人目のSREとして入社しチームの立ち上げに関わりつつ、パブリッククラウドを中心としたSRE領域において基本的にはプレイングマネージャーという形で業務を行っていました。具体的には、既存システムをさくらのクラウドからAWSへ移管するプロジェクトや、CI/CDやローカル開発環境の改善、コンテナ基盤としてECSの導入、オブザーバビリティプラットフォームとしてNew Relicの導入など信頼性と開発体験の向上につながる施策を担当してきました。SREとして働くのはASTで3社目です。
参考リンク:トラストバンク時代のイベント登壇資料
DevOps実装初期フェーズの組織がTerraformとecspressoで求めるAmazon ECS CICDの最適解
さいつよのEC2オートスケーリング環境CICDパイプライン2022オータム
Devに力を授けたいSREのあゆみ

――ASTに入社された経緯についてお聞かせください。
香西:ASTの山﨑賢CTOは前職でもCTOとして私と一緒に働いており、彼からASTに誘われた形です。当時印象的だったのは「キャリアの最終章として本気を出す」という山﨑の言葉でした。ありとあらゆる人脈や経験をもとに自身最後のエンジニアのキャリアの場としてASTを選んだという覚悟ある話を聞いて、新たなステージでそうした人とともに働けるということは、チャンスでもあり大きなチャレンジだとも思いました。
ASTには、toB/toC向けのさまざまな大規模システムの信頼性向上に寄与できる、技術的にもとてもチャレンジングな環境があります。前職での立場もあり悩みましたが、私自身もSREとして挑戦したいという想いが強く、ASTへの入社を決めました。
――AST入社後の印象はいかがでしたか。
香西:技術への投資が積極的に行われており、新しい技術やアーキテクチャに触れられる機会が多いと感じました。特にASTは、スタートアップやベンチャーでの経験が長い山﨑CTOのマインドが受け継がれており、「とりあえずやってみよう」というフレキシブルな雰囲気があります。こうしたスタートアップ感はありながらも、資本力を活かしたさまざまな投資のもと技術的なチャレンジができる環境にあります。

また、テックブログやエンジニア採用サイト、イベント登壇といった活動に対するポジティブな反応が大きいのには驚きました。これは、イオンという歴史ある会社の知名度の高さによるものだと思っています。
結果として、エンジニアリング組織としてのプレゼンスや期待値も上がってきており、これまでのイオンにはなかったようなカルチャーをつくっていけているという実感があります。ただし、エンジニア組織としてはまだまだ発展途上です。外部からの評価に実態が伴う組織にしていけるよう身を引き締めていかなければなりません。
イオンという巨大企業のもつ複雑な課題に挑むために、SREチームのミッション・行動指針の言語化する
――現状ではどのような課題があるのでしょうか。
香西:エンジニアリングには、システムだけでなく人に関わる問題もあります。
AST自体は2020年に設立されたまだ若い会社ですが、親会社であるイオンには長い歴史があり、そのカルチャーの影響も大きく受けています。
よい面もある一方で、古きよき時代の流儀がアジリティの出ない原因やサイロ化を招く原因になってしまっている場面もあります。連携するシステムも複雑かつ多岐にわたり、開発会社も含めたグループ会社間の調整なども必要になるため、システムとコミュニケーションの両面で多くの課題があります。
これを解消していくことの難易度は非常に高いですし、時間も掛かります。SREとしてやることはたくさんあり大変ですが、やりがいにつながる部分でもあると思っています。

――具体的に取り組まれていることはありますか?
香西:今まさに来期に向けて取り組んでいることなのですが、SREチームのミッションや行動指針を策定して、役割なども言語化しようとしています。サービスの規模も大きいですし、プロダクト開発チームとどう連携するか、SREチームの立ち位置はどこなのかも整理して、理解を得ていきたいです。また、そういった情報を公開することで採用に対してもポジティブな効果を狙っていきたいという考えもあります。


見据えるのは自社だけでなくグループ全体
――ミッションに「Platform提供と SREプラクティス導入による DevSecOpsの実現により、イオングループすべての企業価値向上に貢献する」とあります。なぜこのフレーズになったのでしょうか?
香西:ASTのミッションは「イオングループの全てのビジネスをテクノロジーの力で進化させる」です。だからこそ、SREチームのミッションもイオンスマートテクノロジーに閉じたものではなく、イオングループ全てをスコープとしたミッションにしました。
またイオングループで展開している事業やWebサービスは多岐に渡ります。その中でもセキュリティは今後とても重要なファクターとなりますし、SREの責務にもセキュリティを掲げています。そういった背景や思いを込めてDevSecOpsの実現をミッションに掲げました。

まずは信頼を得る、そのために設計されたSREとしての4つの行動指針
――4つの行動指針についても、取り上げられた理由や想いを教えてください。
香西:行動指針をこの4つにした理由は、SREが信頼性に向き合うプラクティスであり、チームとして信頼性に向き合うためにはその柱となるべき行動指針が必要という考えがあったからです。具体的には、1〜2は信頼を得ていくための姿勢、3〜4は信頼を得た上でどのようなHowに注力すべきかという指針となっています。
1.「Ownershipの体現者となる」
ステークホルダーから信頼を得ていくためには主体性を持って物事に取り組む必要があり、他者へその姿勢を伝搬させることで組織全体のケイパビリティに間接的に貢献することができる、という思いが込められています。
2.「OutputよりOutcomeを重視する」
行動の結果「何かをもたらした」という事実の積み重ねが信頼を築くと考えています。これは、人やシステムに対しても信頼性に向き合うためには必要な姿勢だと思い2番目に掲げました。
3.「組織へSREをインストールする」
本来SREは一人ひとりが実践している状態にしていかなければならないはずで、SREチームはその状態を実現するための役割を担っている、という思いからです。
4.「Platformを創出し改善を続ける」
1〜3が実践できている状態となった上で最終的にPlatformEngineeringへ集中できている状態を作りたい、という思いが込められています。
こうしたミッションや行動指針を軸にして、イオングループの企業価値向上という大きなものに対して、自分たちがどうあるべきかを考えていけるチームになるといいですよね。
あと、各プロダクトに対してオブザーバビリティやSREなどの各種成熟度モデルも取り入れて可視化した上で継続的に改善をしていける状態にしたいと考えています。やりたいことは本当にたくさんあります。
とはいえ、今はチームをつくる段階。まずはチームの状態を可視化して持続可能なチームをつくっていくために、定例MTGの見直しといった基本的なところから仕組みづくりからです。
SREチームのメンバーには負担をかけることもあるかもしれませんが、まずはSREチームから変わって、それを社内・グループ会社にも波及させていければと思っています。

――目標を「SREチームの仕事をなくすこと」と設定していますよね。
香西:前述の通り、本来SREは一人ひとりが実践している状態にしていかなければならないと考えていますが、現状組織がそういった状態にはなっていないのでSREチームがリードする形でSREのEnablmentを進めています。
目指しているのは、SREチームがSREのEnablementの役割を終え、Platform Engineeringへの注力ができる状態です。
さらにそのノウハウや成果をイオングループ全体に展開することができれば、会社にとっても個人のキャリアとしても非常に有益なことです。まずはそこを目指して全力投球していきたいですね。

――こういった取り組みをされる際に、香西さんが普段意識されていることはありますか?
香西:いかにチームとしてパワーを出していけるかを意識しているので、HRT(Humility:謙虚、Respect:尊敬、Trust:信頼)は本当に大事だと思っています。
仮に現在の組織の状況やシステムの状況がよくないものだったとしても、そこに陥った背景や理由は必ずあるはずです。現状を深く理解しないまま否定するだけではハレーションが起きてしまいますし、何よりチームとしてのパワーも出ません。
最大限のリスペクトを持って「なぜこうなっているのか」を理解しながら、ともに改善していける関係性を構築できるよう意識して業務を進めています。
DevRelなどにも積極的に手をあげる、その行動力の裏にある原体験とは?
――SREとしての業務だけでもやらなければならないことは多くあるかと思いますが、香西さんはそれに加えてDevRel活動なども精力的に行われていますよね。その原動力はどこから来ているのでしょうか。
香西:原体験は、自分の専門学校時代にあるように思います。当時、新聞奨学生として新聞配達をしながら学校に通っていたのですが、音楽の専門学校は卒業に対するモチベーションが薄くなりがちで、特に新聞配達をしていると睡眠時間が十分に取れないなど体力的に大変な面があり、学校に行かなくなってしまうケースがあります。実際に一緒に入学した高校の友人は学校に通わなくなってしまいました。
こうした状況をよくないと感じた私は、同期と一緒に仲間のモチベーションを上げるための取り組みをしようと決めました。今思えば青臭いですが、やる気がなくなってしまっている友人とご飯を食べに行って「プロのミュージシャンになるんだろ!」と励ましたり。
ただ、こうした活動のかいあって、自分が在籍していた期間の仲間は皆が卒業できたんです。これが、自分の力で組織をよい方向に変えた初めての経験でしたし、組織をよくすることで自分のバリューを発揮したいという今のモチベーションにもつながっていると感じています。
――お話を聞いていて、香西さんは技術だけでなく「人」に対する想いも強いような印象を受けました。
香西:もともとの性格は人見知りなのですが、根本的には人が好きで、人への興味が強いのだと思います。もちろんエンジニアリングをしたりプログラミングを通して課題解決するのも好きですが、やはりサービスの対象は人ですし、一緒に仕事するのも人です。
実際に仕事をしていても、コミュニケーションの問題が多くの割合を占めているなぁと感じることも多々あります。そこを解決できたときの感覚が好きですし、そのためには何でもやろうという気持ちになりますね。

ASTにマッチするのは、0→1の環境づくりに熱量を持って取り組める人
――ASTではどのような人が活躍できるとお考えですか?
香西:現在のASTは、組織とその文化をつくっていくフェーズにあります。
テックブログをスタートするだけでバズるなど外部からの注目を集めているなかで、ASTを改革していくことができれば、その成果をイオングループ全体に波及していける可能性も高まります。今はそこに携われる大きなチャンスといえます。
技術面でも、内製開発の範囲が広がりつつあり、先ほどお話したようにプラットフォームエンジニアリングへのチャレンジも予定するなど変革の途中にあります。
逆に言えば、すでにできあがった環境でレベルの高い人たちと仕事ができるという環境にはありません。そうした環境を0→1でつくっていくところに熱量を持ってチャレンジしていただける方に来ていただけるとよいと思っています。
――ありがとうございました。
イオンは、エンジニアをはじめとするデジタル人材を募集しています。カジュアル面談も実施しておりますので、ぜひお気軽にお申し込みください。
※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。
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