
商品、顧客行動、会計、人事など130超のデータを統合・連動させるイオンネクストの「経営情報基盤開発プロジェクト」 | イオン・エンジニアインタビュー
2024/8/20
この記事に登場している人
この記事を読むとわかること
・「手を挙げたら任せてもらえる」興味・関心を後押しするカルチャー
・イオンネクストは、データ統合の先で何を実現したいのか?
・まだまだ導入余地のあるワークフローシステムの余白
イオンネクストでは、2024年4月から全社的にデータの統合を目指す「経営情報基盤開発プロジェクト」が始動しました。リードするのは、IT部のバックオフィスマネージャーを経て、同プロジェクトのマネージャーに就任した永藤慎介。永藤は、IT部の立ち上げ当初からコーポレートエンジニアとしてバックオフィス関連の幅広い領域に携わってきた経験を活かしながら、散在するデータやシステムを集約し、データ活用の高度化に挑んでいます。
プロジェクトが目指すのは、自動発注や売上予測の実現、お客さま情報の可視化など、データを駆使した経営の意思決定支援。その実現に向けて、若い組織ならではのチャレンジングな環境のなかで、データモデリングや関連システムの集約を進めているところです。今回は、プロジェクトの狙いと展望、そしてイオンネクストでのキャリアについて、永藤に詳しく聞きました。
【目次】
社内に散在するデータやシステムを1つの基盤に集約させていく
——現在の永藤さんの業務内容について教えてください。
永藤私はマネージャーとして「経営情報基盤開発プロジェクト」を進めています。このプロジェクトは、データウェアハウス(DWH)やビジネスインテリジェンス(BI)の構築を中心に社内システムのデータ統合を図るもので、2024年4月から全社的にスタートしました。精度の高いデータをもとにしたエリア別マーケティング分析などを中心に、データドリブンで経営のPDCAを回していけるようにするのがプロジェクトの目的です。
Green Beansのサービスが2023年7月にスタートして以来、受注・発注データ、お客さまの行動情報など多種多様なデータが蓄積されています。今回のプロジェクトでは、ここに商品や売上、人事情報などを追加してデータ基盤をつくっていきます。基盤ができあがってきたら、データを活用した売上予測などを行うための事業予測シミュレーションシステムの開発を予定しています。
——経営情報基盤開発プロジェクトがスタートした背景には、どのような課題があったのでしょうか。
永藤社内にはさまざまなデータの蓄積があったものの、それらをどのように活用すべきか開発者側も理解しきれておらず、経営判断や業務改善に十分活用できていませんでした。多くのエンジニアが、実際の業務やオペレーション、データの使われ方を十分に把握できていなかったため、データが単なる記号の集合体にすぎず、その本質的な価値や意味を理解することが困難な状況にあったんです。
どのようなデータが必要で、それがどう活用されるべきかを理解していなければ、高品質なシステムを開発することも、ユーザーに有効な形でデータを提供することもできません。経営において、データをもとにした迅速かつ正確な意思決定の必要性が高まるなかでは、これが最も大きな課題となっていました。
——永藤さんはもともとバックオフィスマネージャーとして、社内システムの構築を担当されてきたとお聞きしています。今回のプロジェクトではどのようなことを期待されているのでしょうか。
永藤私はIT部のなかでは2番目の古株で、立ち上げ期の何もない状態から現在に至るまでの変遷を把握しています。バックオフィスマネージャーとしては、会計や人事情報などの領域でシステムを構築してきましたし、SCM領域のシステムにも関わってきており、全方位のデータを見てきた自負があります。バックオフィス領域のシステム構築がひと段落し、オペレーションのほうに軸足が移ってきたこともあり、今回、広く深く社内データの中身を見てきた私がプロジェクトにアサインされたのではと考えています。

——経営情報基盤開発プロジェクトは、どのようにして進めていくのでしょうか。
永藤中心となるのが、データのモデリングです。Green Beansのオペレーションシステムから取り込んで、見える化が必要なデータだけでも130を超えています。このほか、会計システムなどほかの社内システムから取り込み始めたデータ、現状で管理しきれていないデータも含めて整理し、まずはデータを活用できる状態に整えていくことが第一歩です。
DWHと事業予測シミュレーションシステムの構築がプロジェクトの主な目的ではありますが、今回のプロジェクトが対象とする範囲は広く、頭を切り替えて新規でつくっていかなければならない仕組みやツールも多くあります。実際に枝葉の問題では収まらなさそうなタスクが複数出てきています。
なかでも個人的に注力したいのが、社内システムの集約です。Green Beansのローンチに向けては、スケジュールの都合上、スクラッチで構築するのではなく、イオングループの資産を活用してバックオフィス系のシステムを整備してきました。しかし、それによる弊害も生じました。システムごとにデータを個別管理することにより、シナジーを生めていない状態になってしまっているのです。散在するデータをまとめ、人間が触るシステムとしても1つの基盤に集約させていく。これが今回のプロジェクトのもう1つの野望でもあります。

——プロジェクト開始後3か月間で着手されたことがあればご紹介いただけますか。
永藤まず、これまでの自身の知見を活かしてデータを整理し、各部門の業務やニーズに合わせたデータビューをひたすら作成しています。これは、かなり力技ですね。たとえば同じ受注関連のデータでも、経理担当者が見るのとサプライチェーンの発注者が見るのとでは、意味合いが異なります。どちら側の立場でも程よく活用できるレポートになるようにビューを調整するのは、なかなか難しいです。
この課題を解決するために、社内で使う用語の統一に取り組んでいます。イオングループで長年働いているメンバーと最近中途入社したメンバーとでは、使用する言葉や理解に差があります。その結果、同じレポートを見ていても、人によって違う解釈をしてしまうおそれがあります。
そこで現在進めているのが、用語一覧の作成です。「このデータはこう呼びましょう」といった具合に共通言語を定義することで、データの理解を深めることを目指しています。用語は廃れるものもあれば新しく生まれるものもあるので、今後永久的に続く壮大なミッションだと感じています。
さらに、データの取り込みと整理も進めています。プロジェクト開始から3か月間で既存のDWHの改善とデータの取り込みをひととおり完了させました。今後は、この基盤を活用しつつ、より高度なデータ活用に向けた準備を進めていきます。
——次の四半期ではどのような取り組みを行う予定ですか。
永藤散在するデータやシステムを集約し、体系立った構成に刷新していくための取り組みにも着手しようとしています。私の感覚だとERPを導入するアプローチになると考えており、現状ではその検討段階にあります。
そのために重要となるのが、業務フローの整理です。私たちが現在使用している業務フローの多くは、イオンネクストが本格的に事業を開始する2年前に作成されたもので、「こんな業務の流れになりそう」と半ば当時の想像で描かれたものでした。実際の運用を始めてみると、当初の想定どおりに進んでいる部分もあれば、大きく異なる部分も多々あります。さらには、現場での工夫により改善された領域もあります。そこで、私たちは一度立ち止まって、これらの業務フローを棚卸しする必要があると考えています。具体的には、過去1年間の実際の運用状況を振り返り、現状を正確に把握したうえで、必要なブラッシュアップを行う予定です。
さらに、この見直しには将来の事業拡大計画も考慮に入れる必要があります。今後2年以内に倉庫とサービスエリアが現在の2倍に、その後も3倍、4倍に拡大する計画があります。この急速な成長に対応できる業務フローを設計しなければなりません。このような現状分析と将来予測を踏まえたうえで、適切なパッケージやサービスの選定を行っていく予定です。
データを活用した自動発注、顧客体験の向上、グループ企業への展開につなげる
——経営情報基盤開発プロジェクトが達成されることで、どのような世界が実現できるのでしょうか。
永藤今回のプロジェクトは、物流領域の業務改善を担う「デマンドチェーン改革プロジェクト」と並走しており、このプロジェクトと合わせることで、データを活用した自動発注が行えるようになると考えています。倉庫にある在庫数などをもとに不足分を発注するという既存の自動発注とは異なり、受注したらそのまま発注書を作成し納品してもらう流れをすべて自動で行い、人間はそれを眺めているだけの状態にしていくことを目指しています。
現状では、受注に対して、在庫数や廃棄予測をもとに人間が発注をかけています。たとえば、回転率の良いものは在庫しておきますが、あまり良くないものは受注後に発注することもあります。この方法では、廃棄が予想より多かったり仕入れたのに売れなかったりと、意図しない状況が発生しえます。このため、在庫しておくか発注するか、どの商品を選定するかといった判断は慎重にならざるをえません。これが自動発注になることで、無駄な在庫を持つリスクや廃棄のリスクがなくなります。人間が行う作業はチェックのみで済むようになります。
——自動発注はGreen Beansのユーザーにとってもメリットがあるのでしょうか。
永藤Green Beansは、先に配送日時を予約してから商品を購入する仕組みになっており、現状では受発注の状況次第で時間帯によって購入できる商品が異なる場合があります。発注の精度が向上して完全な自動発注が実現できれば、在庫がなくとも受注をトリガーに発注をかけられるようになるため、品切れが減り、お客さまが欲しいと思ったときに欲しいものが手に入れられるようになると考えています。
——データはマーケティングにも活用できそうですね。
永藤もちろんです。お客さまの属性情報に加え、お客さまがどの商品を何回購入してどこに届けられているのかという配送情報も取得できているので、どの地域でどのような商品の売れ行きがよいかといったことがお客さまの属性情報と紐づけてすべて把握できるようになります。市区町村よりも細かい粒度でエリア別の分析も行えます。
競合店やイオングループの店舗の位置情報もわかっているので、たとえば、売れ行きの悪い地域のお客さまに対してピンポイントでクーポンを発行したり、お値打ち品を提案したりといったことをすべて自動で行える仕組みをつくることも可能となります。これがうまくいけば、他のイオングループ企業への展開も考えられます。
手を挙げれば⾃分の実現したい開発に挑戦できる環境
——そうした世界観の実現に向けて、現状の課題はどこにあるとお考えですか。
永藤イオンネクスト自体はまだ若い組織で、開発の手順もすべて整っているとはいえず、エンジニアにとってはハードな環境にあります。未整備の状況を整理整頓しながら前に進んでいかなければなりません。
私がバックオフィスマネージャーを務めていたときには、当初ワークフローシステムが導入されておらず、紙とハンコベースで決裁や申請を行っていました。そこで、まずはワークフローシステムを導入し、決裁の電子化を実現しました。また、給与支払や会計システムも当初は未導入で、経理担当者による多くの手作業が発生していました。会計システムのAs-Isすらない状態だったため、まずは会計制度の検討からスタートし、さまざまな部署との調整を行いながら会計システムの構築を進めてきました。
正直に言えば、入社前にはここまで未整備だとは思ってもみなかったのですが(笑)個人的には楽しみながらやれてきましたね。イオンネクストにはまだそうした状況にある業務も残されています。ゼロから仕組みをつくっていくことを楽しめる人にとっては、イオンネクストはとても良い環境にあると思っています。
——ほかにイオンネクストのカルチャーの特徴はありますか。
永藤手を挙げれば⾃分の実現したい開発に挑戦できる風土があります。実は、社内データの整備は、かねてからやりたいといってきたことなんです。バックオフィス領域の担当ではあったものの、商品や物流の情報までを管理するうえで、どのようなデータモデルを採用すべきか、レビュアーとして参加したり自分でつくってみたりと、自ら進んでSCM領域のデータ設計に携わっていた経験が今につながっています。
現在はプロジェクトが中断していますが、移動販売のプロジェクトにも自ら手を挙げて参画していたことがあります。自分の興味や関心を仕事に活かせる機会が豊富にあり、新しいことにチャレンジしやすい環境だと感じています。
「今できていること」と「新しくトライできること」の2つの軸でキャリアを構築
——永藤さんは、状況に応じてさまざまなことに興味を持たれてきた印象です。これまでどのようにして自分のやりたいことを見つけられてきたのでしょうか。
永藤私がイオンネクストに入社したのは、前職でERPや会計システムの導入支援を行ったことがきっかけになっています。さまざまな業態のお客さまに関わるなかで、データやオペレーションが複雑で、イレギュラー対応が求められがちな小売業界で働くことに興味を持つようになりました。より難易度の高い仕事にチャレンジしてみたいと思ったんです。

——現状の仕事に新しい視点を加える形で興味の幅を広げられてきたんですね。
永藤そうですね。私は自身のキャリアを考えるうえで、「今できていること」と「新しくトライできること」の2つの軸を大切にしてきました。エンジニアとしてのキャリアをスタートさせたばかりの頃は、車が好きだったこともありカーナビの組込みソフトウェアの開発に携わっていましたが、そこからスマートフォンと連動させたサービスを考えるようになったことで、Webアプリケーション連携に興味を持つようになりました。そしてWebアプリケーションの技術を身につけ、SAPシステムと連動するサブシステム構築を行ったことでERPに興味を持つようになり……という流れです。自分が今できていることにプラスアルファする形で何か新たにできることがないか探してきました。
今回の経営情報基盤開発プロジェクトも同様です。これまで蓄積してきたデータとその知見を活用できるフェーズに移行したと捉えています。これからも、自分の興味を大切にキャリアの幅を広げていければと思っています。
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※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。

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