
イオングループの分散化されたEC群を統合し「標準化する」大規模開発プロジェクトの立ち上げに迫る
2025/4/2
この記事に登場している人
舛倉 友輝
Tomoki Masukura
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMO開発ディビジョン OMOシステムPMユニット OMOシステムPMチーム PM
新卒でSIerに入社し、大手企業の業務システム開発にプログラマーとして従事した後、SaaS企業に転職。CRM、FAQ製品の要件定義、プロジェクトマネージャー、システム運用、事業責任者、IPOのため内部統制に対応した開発プロセスの構築、CDP新規事業立ち上げ等を経験。2023年イオンスマートテクノロジー入社。イオンの事業会社に展開するEC基盤のプロジェクトマネージャーを担当。
鐘 辰
Shin Shou
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMO開発ディビジョン OMOシステム開発ユニット OMOシステム開発ユニット エンジニア/PL
2013年、新卒で株式会社日立ソリューションズ中国子会社に入社。アパレル、飲食系ECプロジェクトの開発に約8年関わり、要件定義からテストまでの全般タスクを担当。2024年1月より現職。
大坂 みなみ
Minami Osaka
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMO開発ディビジョン OMOシステム開発ユニット OMOシステム開発チーム エンジニア/PL
ex-株式会社ジェーエムエーシステムズ(通称:JMAS)
2020年に新卒で株式会社ジェーエムエーシステムズに入社。小売系ECの大規模プロジェクトに約3年関わる。開発面では、バックオフィスで店舗の従業員が使うWEBアプリやAndroidアプリ、バッチの設計・製造などを担当。要件定義やテスト・リリースの計画や進捗管理なども担当した。2023年10月より現職。
#順天堂大学 #バックエンド #Androidアプリ開発 #Java #TypeScript #React #AWS #Azure
舛倉 友輝
Tomoki Masukura
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMO開発ディビジョン OMOシステムPMユニット OMOシステムPMチーム PM
新卒でSIerに入社し、大手企業の業務システム開発にプログラマーとして従事した後、SaaS企業に転職。CRM、FAQ製品の要件定義、プロジェクトマネージャー、システム運用、事業責任者、IPOのため内部統制に対応した開発プロセスの構築、CDP新規事業立ち上げ等を経験。2023年イオンスマートテクノロジー入社。イオンの事業会社に展開するEC基盤のプロジェクトマネージャーを担当。
鐘 辰
Shin Shou
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMO開発ディビジョン OMOシステム開発ユニット OMOシステム開発ユニット エンジニア/PL
2013年、新卒で株式会社日立ソリューションズ中国子会社に入社。アパレル、飲食系ECプロジェクトの開発に約8年関わり、要件定義からテストまでの全般タスクを担当。2024年1月より現職。
大坂 みなみ
Minami Osaka
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMO開発ディビジョン OMOシステム開発ユニット OMOシステム開発チーム エンジニア/PL
ex-株式会社ジェーエムエーシステムズ(通称:JMAS)
2020年に新卒で株式会社ジェーエムエーシステムズに入社。小売系ECの大規模プロジェクトに約3年関わる。開発面では、バックオフィスで店舗の従業員が使うWEBアプリやAndroidアプリ、バッチの設計・製造などを担当。要件定義やテスト・リリースの計画や進捗管理なども担当した。2023年10月より現職。
#順天堂大学 #バックエンド #Androidアプリ開発 #Java #TypeScript #React #AWS #Azure
この記事を読むとわかること
・基幹システムASPBと連携し、OMO戦略を強化する新たな小売体験を実現
・ECの内製化を進め、スクラム開発とクラウド技術を活用したアジャイルな開発体制へ移行
・iAEONアプリとの連携を視野に、店舗とデジタルを融合させた次世代の買い物体験を構築
小売業界に新たな革新の波が押し寄せている。ネットスーパー、EC、店頭でのギフト発送や商品受け取りサービスなど、イオングループ各社が独自に展開してきたオンラインサービス。これらを統合し、グループの総力を結集した新たな顧客体験の創造に向けて、イオンスマートテクノロジー(AST)が大きな一歩を踏み出した。
その核となるのが、グループ全体の共通基盤として開発を進める「標準ECシステム」だ。このシステムは、店舗の在庫管理基盤である基幹システムASPB(AEON Smart Platform for Business)と緊密に連携。オンラインとオフラインの境界を溶かし、シームレスな買い物体験を実現するOMO(Online Merges with Offline)戦略の要となる。
イオングループが目指すのは、単なるシステム統合にとどまらない。実店舗とデジタルの強みを掛け合わせることで、新しい時代の小売りの姿を創造する。この壮大なビジョンの第一歩として、標準ECシステムの開発が始動したのだ。
2024年4月にイオン琉球での展開を皮切りに稼働を開始し、現在も機能拡充を続けている標準ECシステム。イオングループの公式アプリ「iAEON」との連携も視野に入れ、さらなる進化を遂げようとしているこの開発プロジェクトの舞台裏に迫るべく、開発チームの舛倉、鐘、大坂に話を聞いた。
【目次】
20年の歴史を経て、いま解決すべき分散型ECの課題
イオングループのEC事業は2000年代初頭、通販サイト「イオンショップ」からスタートした。当初は中元や歳暮といった「ハレの日需要」が中心で、日常的な買いもののECとしては十分な成果を上げられていなかった。「大手ECを追い越す」という理想のもと、大規模なシステム投資も行われたが、結果として各事業会社が独自のECサイトを構築・運営する分散化が進んでいった。当時について、標準ECのプロジェクトマネージャーを務める舛倉は次のように説明する。
事業会社からすると、イオンという看板のもとでECを展開すれば売上が見込めるという認識はあったものの、高額な利用料負担が難しかった。そのため、独自に安価なECパッケージを導入するケースが増えていきました。結果として、会員ID・ポイント管理も分散化していました。(舛倉)
こうした状況を変えるターニングポイントとなったのが、会員基盤の統合だ。iAEONアプリの普及により、店舗でのクーポン利用やAEON Pay決済には会員IDが必須となり、これまで分散していた会員情報が一元化されていった。WAON POINTも店舗・EC共通で利用可能となったことで、オムニチャネル展開の基盤が整いつつある。
このような背景のもと、2023年2月から始動したのが標準ECプロジェクトだ。既存ECサイトのEOL対応という喫緊の課題に対し、単なるリプレイスではなく、グループ全体で活用できる基盤の構築を目指した。
プロジェクトの中核となったのが、ASPBと呼ばれるイオングループの基幹システムの活用だ。ASPBは店舗の商品・在庫を一元管理することが可能なプラットフォームで、すでにネットスーパーや店頭でのギフト発送などを担う承りシステムで実績があった。
※「承り」とは、お中元やお歳暮など店頭でのギフト発送、店頭での商品受け取りサービスなど、店頭での対応が必要になるサービスを指す。
ASPBをベースにすることで、店舗とECの在庫連携や、店舗受け取りなどのOMOサービスが実現できます。また、すでに検証済みの基本機能を活用できるため、EC特有の機能開発に注力できる利点もありました。(舛倉)
内製化へ向けた大きな挑戦
当初、開発はベンダーに委託する形で進められたが、ASTとしての内製化方針のもと、徐々にチーム構成を変更。2023年8月の舛倉の参画を皮切りに、徐々に内製化を推進していった。
舛倉自身、前職ではSaaS企業でプロジェクトマネージャーとして内製開発やアジャイル開発を推進してきた。
クラウドアーキテクチャの採用や内製化の推進など、取り組みとしては近い部分も多かったのですが、ECという領域は初めての経験でした。さらにイオンの場合、基幹システムとの連携など、考慮すべき要素が格段に多い。その部分は大きなチャレンジでしたね。(舛倉)
2023年10月には大坂、2024年1月には鐘がエンジニアとして加わった。そして、2024年4月末にはローンチを迎え、イオン琉球オンラインショップで標準ECシステムの稼働を開始した。
ローンチと同時期に内製化に伴う大幅な体制変更が行われ、メンバーの役割は大きく変化した。大坂は、当初開発者としてプロジェクトに参画したが、仕様統制や進捗管理など、より管理的な役割にシフトしていった。鐘も同様に、開発からより広い役割へと範囲を広げ、前職でのブリッジSE経験を活かし、ASPBに関する要件定義やインシデント対応などに携わっている。
大坂によると、内製化への移行で最も難しかったのが、仕様の理解と引き継ぎだったという。
特にローンチ直後の体制変更だったため、イオン琉球からの問い合わせ対応もあるなか、仕様を最も理解していた方々が抜けることになった。そうした状況下で、いかにサービスの質を維持するかが課題でした。
特にASPBは独特な仕様も多く、その理解には苦労しました。開発メンバーとして参画した当初は自分のタスクをこなすことが中心で、全体像の把握は十分でなかったため、引き継ぎ期間中は、ベンダーの方にギリギリまで確認して、わからないことを潰していきました。体制変更前も自分のタスクだけでなく、全体を把握できるよう意識して会議に参加していました。(大坂)
標準ECを支える技術基盤とその課題
標準ECシステムは大きく3つのコンポーネントで構成される。バックエンドの処理を担う標準EC基盤、フロントエンド画面、そして事業会社向けの管理画面だ。技術スタックとしては、フロントエンドにReact、バックエンドにJavaを採用している。
フロントの基盤はASPBとは切り離し、軽量なReactを採用することで、大規模アクセスにも対応できる構成としています。(大坂)
一方で、コードベースには課題も残る。
リファクタリングの必要性は認識しており、スクラムを回すなかで定期的にその時間も確保していますが、まだ改善の余地は多分にあります。(大坂)
ASPBとの連携においても、独自の課題がある。ASPBの開発を担当する中国の開発拠点「Aeon Digital Management Center(以下、DMC)」とのコミュニケーションだ。ブリッジSEを担当する鐘は、技術面と文化面の双方での苦労を語る。
ASPBの詳細な実装が見えないことが大きな課題でした。実際の運用開始後に細かな障害が発生することもあり、検証環境で動作を確認したり、DMCの開発担当者に直接確認したりしながら、仕組みの理解を深めていきました。(鐘)
さらに、企業文化の違いも大きな課題となった。
前職でもブリッジSEの経験はありましたが、それは日本企業との協業でした。DMCは中国本土の企業文化を持っており、仕事の進め方や重視するポイントが異なります。社会人になってから日本企業でしか働いたことがない私にとって、この文化の違いは想像以上に大きなものでした。(鐘)
たとえば、会議では理解が得られたように見えても、実際に開発を進めるうえで意図が十分に伝わっていないことがわかるケースもあったという。「この課題に対しては、要件定義の段階で詳細な資料を作成し、開発着手前にレビューを入念に行うようプロセスを改善しています。相手の立場に立って考えることの重要性を、日々実感しています」と鐘は語る。
ウォーターフォールからスクラムへ - 開発文化の転換期に直面したエンジニアの苦労
プロジェクトチームはスクラムでの開発を採用しているが、これまでウォーターフォール開発の経験が中心だったメンバーにとって、そのギャップは大きかったという。
前職ではウォーターフォールで開発していたため、自分一人で機能を期間内に作り上げるケースが多かったのですが、スクラムではチーム全体でスプリントのタスクを達成していく形です。わからないことがあればすぐに質問する、というコミュニケーションの重要性を改めて実感しました。(大坂)
スクラムは速度重視というところがあり、ウォーターフォールで慎重に進めていた前職までの進め方とは大きく異なりました。開発の考え方やペースなど、そこのギャップは本当に大きかったですね。(鐘)
特にドキュメント管理は課題のひとつだ。
アジャイルということもあり、ドキュメントは比較的少なめです。ただ、過去の開発経緯を追う際など、もう少し詳細な記録があったほうがよいケースもあります。
たとえば、現在でも前の開発体制時代に開発されたコードを見て『なぜこうなっているんだろう』と考えることがあります。当時の想定は想像するしかなく、不具合が発生したときにも『こうしていた理由は他にあるんじゃないか』と慎重に判断しなければなりません。そのあたりは本当に難しいところです。チケットの説明文を充実させるなど、改善を進めているところです。(大坂)
標準ECが描く、次なるデジタル戦略
現在、標準ECが採用されたイオン琉球オンラインショップは順調に稼働を続けており、大きな障害も発生していない。特に、承り機能は成功事例として挙げられる。
ブラックフライデーの予約やおせち、クリスマスギフトなど、ハレの日需要に対して実績を上げています。(舛倉)
今後の展開として期待されるのが、iAEONアプリとの連携だ。現在、iAEONアプリはクーポンやAEON Pay決済など、店舗での買いものに欠かせないツールとなっている。そこにEC機能が加われば、アプリからの商品購入や、お気に入り店舗での受け取りといったシームレスな買いもの体験が実現できる可能性がある。
実際に、「iAEONから買いものできるようにならないんですか?」という質問が多く寄せられており、ユーザーのニーズも高そうだ。リアル店舗の強みを活かしながら、デジタルの利便性を組み合わせる——標準ECはそんなイオンならではのOMO戦略の重要な基盤となるだろう。
今後は、返品・返金機能など、EC特有の要件開発も本格化する。また、イオン琉球での成功事例をもとに、他の事業会社への展開も視野に入れている。
標準ECという名のとおり、どの事業会社でも活用できる汎用性の高い基盤を目指しています。たとえば、今後は分析のしやすさや販促機能の強化など、プロダクトとしての機能も充実させていく必要があります。そのためにも、プロダクトの成長を考え、自らのスキルの範囲を超えて動ける人材を求めています。(舛倉)
イオングループのEC基盤として、さらなる発展が期待される標準ECシステム。技術と事業の両面で、今後の展開が注目される。
イオングループでは一緒に変革に挑んでくれる方を募集中です。
どんなことをしているのか気になる方は、お気軽にご連絡ください。カジュアル面談も実施しておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう!
【関連記事】
ASPBの開発を担う中国の拠点・DMC(Aeon Digital Management Center)との連携については、こちらの記事もご参照ください。
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※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。

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