
この記事に登場している人
OMOディビジョン
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後藤 聡
Satoshi Goto
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン ディレクター
ダイエー入社後、店舗運営・商品企画・営業企画・マーケティング・ECまで幅広く経験。
トップバリュ出向やICT領域での事業責任者を経て、2024年より現職。
現在はイオンスマートテクノロジーでOMO・EC領域の戦略立案・実行を担う。
黄 振宇
Huang Zhenyu
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン NSユニット シニアマネジャー
2009年イオンリテール入社。店舗配属後、2010年よりイオングループ内の出向が続き、秘書部・社長秘書を経て、2012年から9年間中国駐在。スマホ決済、即配サービス、CRM、越境ECなどのDX業務のゼロベースからの構築を経験。2021年日本に帰任、イオンスマートテクノロジーに出向し、ネットスーパー、デジタルピッキング、即配サービスを担任。
安井 崇久
Takahisa Yasui
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン NSユニット NS推進チーム マネージャー
2000年株式会社ハートフレンド入社。リージョナルのスーパーマーケットにて売場担当、店長、バイヤー等を歴任。2012年楽天マート株式会社(楽天グループのネットスーパー専業子会社)入社。主にチルド・酒の担当バイヤー及び加工食品分野のマネージャーを歴任。途中、ローソンとのオンラインビジネス協業もあり、1年間ローソン出向を経験。2017年楽天グループ株式会社へ転籍し、ネットスーパー事業の商品部マネージャー、商品部長を歴任。2018年楽天西友ネットスーパー株式会社へ出向。ネットスーパー専用商材グループのマネージャー、生鮮グループのマネージャーを歴任。2022年イオンスマートテクノロジー株式会社へ入社し、2024年より現職。
後藤 聡
Satoshi Goto
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン ディレクター
ダイエー入社後、店舗運営・商品企画・営業企画・マーケティング・ECまで幅広く経験。
トップバリュ出向やICT領域での事業責任者を経て、2024年より現職。
現在はイオンスマートテクノロジーでOMO・EC領域の戦略立案・実行を担う。
黄 振宇
Huang Zhenyu
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン NSユニット シニアマネジャー
2009年イオンリテール入社。店舗配属後、2010年よりイオングループ内の出向が続き、秘書部・社長秘書を経て、2012年から9年間中国駐在。スマホ決済、即配サービス、CRM、越境ECなどのDX業務のゼロベースからの構築を経験。2021年日本に帰任、イオンスマートテクノロジーに出向し、ネットスーパー、デジタルピッキング、即配サービスを担任。
安井 崇久
Takahisa Yasui
イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン NSユニット NS推進チーム マネージャー
2000年株式会社ハートフレンド入社。リージョナルのスーパーマーケットにて売場担当、店長、バイヤー等を歴任。2012年楽天マート株式会社(楽天グループのネットスーパー専業子会社)入社。主にチルド・酒の担当バイヤー及び加工食品分野のマネージャーを歴任。途中、ローソンとのオンラインビジネス協業もあり、1年間ローソン出向を経験。2017年楽天グループ株式会社へ転籍し、ネットスーパー事業の商品部マネージャー、商品部長を歴任。2018年楽天西友ネットスーパー株式会社へ出向。ネットスーパー専用商材グループのマネージャー、生鮮グループのマネージャーを歴任。2022年イオンスマートテクノロジー株式会社へ入社し、2024年より現職。
この記事を読むとわかること
・イオングループのDXを担うASTが、ネットスーパー事業の統一基盤とデジタルピッキングシステムを開発
・日本独自の商習慣「欠品代替」や複雑な店舗オペレーションに挑み、現場と顧客の利便性を両立
・バイリンガルBSEの導入や関係者間の“言葉合わせ“によって開発が加速
・ネットとリアルをシームレスにつなぐOMO構想の実現へ、黒字化と顧客価値の両立を追求
私たちの生活に欠かせない存在となったネットスーパー。その利便性の裏側には、絶え間ない技術革新と、現場のニーズに応えようとする開発者たちの情熱がある。国内最大級の小売グループであるイオンもまた、この分野で大きな挑戦を続けている。その中核を担うのが、イオングループのDX戦略を推進するイオンスマートテクノロジー(以下、AST)だ。
同社は近年、グループ全体のネットスーパー事業を支える新たな統一プラットフォームと、店舗作業の効率を劇的に改善するデジタルピッキングシステムの開発・導入に取り組んできた。しかし、その裏には「開発PM不在でのプロジェクト発足」「1つの機能追加だけで初期開発コストの3割を占めてしまう」といった、大企業DXならではの試行錯誤があった。
今回、プロジェクトを牽引するOMOディビジョンのディレクター後藤、ネットスーパーのフロントシステムを担当する黄、そしてデジタルピッキングシステムの推進を担う安井の3名に、プロジェクトの背景から開発の苦労、そして今後の展望まで、詳しく話を聞いた。
【目次】
お客さま・従業員の双方が便利なネットスーパーへ
ASTが提供するネットスーパーシステムは、基本的に店舗を拠点とし、店内の商品を半径5~10キロ圏内の顧客のもとに配送するものだ。イオングループの基盤システムを連携させることで、パッキングから配送までを一気通貫で提供できることが強みとなる。
黄は「特に主婦の方や、共働きでなかなか来店して購買することができない世代の方々に、時短購買や簡単調理、定期消耗品の購入という価値を提供しています」と説明する。アプリとWebで同じ機能が提供されており、画面遷移の速さ、操作性の高さに加え、再購入機能や「カレーの日」といったテーマ別の商品提案、お気に入りフォルダ機能などにより、時短購買を実現している。
現在は、イオン九州とイオンリカーの2社19店舗でサービスが稼働し、今後はイオングループ各社への展開が予定されている。
このネットスーパーを支える重要な仕組みの1つが、デジタルピッキングシステムだ。デジタルピッキングシステムは店舗従業員向けの社内ツールとして位置づけられる。従来、ネットスーパーの注文が入ると、店舗スタッフは紙に印刷された注文書を見ながら売り場を回り、商品を集めて袋詰めしていた。
デジタルピッキングシステムでは、スタッフはハンディ端末を用い、その画面に商品画像や売り場の位置が表示される。商品をスキャンすると正誤判定も行われるので、商品のピッキング作業の効率化やミスを防ぐことが可能となる。
デジタルピッキングは、ASTのネットスーパーだけでなく、イオンリテールが運営するネットスーパーにも対応しており、現在約280店舗で活用されている。実際の成果も数字に表れている。安井は、「導入初期と比較して、習熟した店舗ではピッキング効率が30%~45%程度向上し、1時間あたりに1人が処理できる商品点数も30~40点から50~60点へと増加しています」と説明する。
紙ベースの作業と比較して、商品画像が表示されたり、店舗レイアウトに最適化されたピッキングルートが指示されたりするだけでも、作業効率は格段に上がる。スキャンによる誤投入防止機能も効果的で、実際に誤投入率は大幅に削減され、配送ドライバーへの引き渡し遅延も激減したという。
最大の難関は、日本独自の商習慣「欠品代替」
今回のプロジェクトの大きなミッションは、これまでイオングループ各社がそれぞれ独自開発していたネットスーパーシステムを、統一プラットフォーム化することにあった。ベースとなったのは、中国にあるイオンの開発拠点AEON Digital Management Center(DMC)が開発した「即時配送システム」だ。
プロジェクトが本格始動したのは2022年初頭。しかし、中国で開発されたシステムを日本のオペレーションに適合させる過程で、開発チームは想像以上の困難に直面することになる。
当初は、中国の即時配送システムが日本の標準ツールとしてスムーズに適合するだろうと期待していました。しかし、実際にはそこから約3年間、日本の複雑なオペレーションに合わせて大規模な改修を重ねる必要がありました。製品設計、開発管理、そしてオペレーションの再構築。これらすべてに非常に苦労しましたね。(黄)
なかでも、黄が教訓になったとするのは「言葉の統一」「認識のズレ」だという。特に苦戦したのが、日本特有の「欠品代替」機能の実装だった。
欠品代替とは、注文商品が品切れの際に、同等品をそのままの価格で代替提案する仕組み。「世界的に見ると欧米や中国にはない、日本独特の商習慣」と黄は説明する。
たとえば、お客さまが購入した198円の商品が欠品の場合、258円の代替品があっても258円で販売せず198円にする。より高い料金を払わせることはしないという、お客さま本位の考え方です。(黄)
当初、黄は欠品代替を、「便利なサービスの1つ」と軽く考えていたという。しかし、システム設計の複雑さは想像を超えていた。代替によって商品情報、在庫情報、販売価格情報が動的に変更され、しかも元の価格に合わせるための特殊な売価変更処理も必要になる。これをすべてシステムで一気通貫に実現するのは、想像以上の困難が伴う。
さらに、欠品代替には1対1の交換だけでなく、複数商品をまとめて代替するN対Nのパターンや、税率の異なる商品を代替する場合のインボイス対応、自動売変処理など、考慮すべき点が山積していた。
欠品代替機能だけで、製品最初のフェーズの開発コストの実に3割近くを占めたのではないかと感じています。この機能の裏にある本当の複雑さを初期に理解しきれていなかったことは、大きな反省点です。(黄)
店舗のオペレーション面でも課題は多岐にわたった。安井によると、電話連絡の要否や代替希望の有無を組み合わせると4つの依頼パターンがあり、それぞれに対応した処理フローを設計する必要があった。
さらに複雑なのは在庫配分だ。同じ商品に複数の注文が集中し、在庫が不足した場合、どの注文にどう割り当てるかといった判断もシステムで制御しなければならない。
たとえば同じ商品10個の注文に対し、売り場には4個しかない場合、どの代替商品に割り振るのかという問題が出てきます。非常に複雑で、処理ロジックを考えるのは本当に大変でした。(安井)
安井はこれらの課題に対し、「お客さまの注文に対して絶対にミスを起こさないこと」「従業員が迷わず操作できるよう、システムが正しく代替品をサジェストすること」を特に重視したという。「従業員が考える余地を残してしまうと、それはもはやデジタル化とは言えませんから」と、その哲学を語った。
事業視点の欠如が生んだ最大の反省は、「あるべき姿」の設定
プロジェクトの振り返りで、後藤は根本的な問題を指摘する。約1年前にダイエーからASTへ移籍した後藤は、着任前に外部の視点からこのプロジェクトを見続けてきた。
事業会社の一員としてASTから提案を受けていた際、正直に言って「システムを作り、導入すること」自体が目的化してしまっているように感じることがありました。「イオンのネットスーパーが、お客さまや従業員、事業会社にとってどのような価値を提供するのか」という本質的なビジョンが十分に共有されていなかったのです。
そのため、各事業会社からはそれぞれの既存オペレーションに基づいた個別の要望が多数寄せられ、開発チームはそれらすべてに対応しようと苦慮していました。本来であれば、まず「イオンのネットスーパーとはこうあるべき」という大きなポリシーを確立し、それに基づいて各社のニーズを整理・統合していくべきだったのです。(後藤)
特に重要なのは、ネットスーパーの収益構造の理解だ。多くのネットスーパー事業は、店舗と同じ価格で商品を販売し、配送コストも負担するため、構造的に赤字になりやすい。だからこそ、システムとオペレーション効率化による黒字化が不可欠となる。
私たちのシステムと、デジタルピッキングを活用した効率的なオペレーションをセットで導入することで、人件費や配送費を圧縮し、事業の黒字化、そして持続的な成長を可能にすることを訴える必要がありました。この『あるべき姿』を最初にしっかり描けていれば、開発の苦労も少しは軽減できたかもしれません。(後藤)
チーム体制の再構築で見えた突破口
黄は、プロジェクト初期の体制面の課題についても率直に認める。
今振り返ると、困難な船出だったと言わざるを得ません。プロジェクトの中核となるべき開発PMが十分にアサインされないまま、非常に貧弱な体制でこの大きなプロジェクトをスタートさせなければならなかった。これが、何よりも大きな反省点です。(黄)
ベースとなったシステムが中国で開発されたものであったため、海を越えたコミュニケーションも大きな障壁となった。黄自身は日本語と中国語の両方に堪能だが、「それでも、私一人の力だけでは到底乗り越えられない壁があることを痛感しました」と当時を振り返る。
転機となったのは2023年後半。多数のバイリンガルBSE(ブリッジシステムエンジニア)の採用により、日本と中国、そして開発チームと業務チームのあいだに強力なコミュニケーションハブを構築した。
開発チームと業務チーム、それぞれの「言葉」を丁寧にすり合わせ、認識の齟齬をなくすことに全力を注ぎました。この体制が整ってからようやく関係者間の歯車がしっかりと噛み合いはじめ、プロジェクトが大きく前進するようになりました。(黄)
リアルとネットを区別する必要さえなくなる、シームレスな顧客体験へ
ASTが推進するネットスーパーとデジタルピッキングシステムは、イオングループが掲げるOMO戦略において、どのような役割を担っていくのだろうか。後藤は、その未来像をこう語る。
最終的には、ネットスーパー、EC、即配が「店舗出荷」という軸でシームレスになることを目指しています。お客さまの「今すぐ欲しい」「数時間後に欲しい」「店舗にはないけど取り寄せたい」といった多様なニーズに応じて、最適な手段を自由に選択できる世界です。(後藤)
実際に、イオングループのiAEONアプリとの連携により、リアル店舗とネットサービスの垣根は徐々に低くなっている。
普段リアル店舗を利用されているお客さまが、同じ店のネットスーパーを使う割合が非常に多い。これは、普段から買い慣れているお店の商品であれば、品質への信頼感が高いからです。リアル店舗とネットをシームレスにつなぎ、たとえば店舗とネットで共通のクーポンを使えるようにするなど、相互送客を促進していくことが重要です。究極的には、リアルのお客さまとネットのお客さまを区別する必要さえなくなるかもしれません。(後藤)
ただし、事業の持続可能性は不可欠だ。後藤は「サービスを継続する以上は、黒字化を考えていかないとサステナブルな事業にはならない。お客さまにとって便利で価値あるサービスを提供し続けるためにも、効率化による収益性の改善は常に追求していく必要があります」と語る。
イオングループ各社への展開が進むなか、このプロジェクトの真価が問われるのはこれからだ。しかし、現場の声を聞き、改善を重ね、顧客価値と事業価値を両立させていく──ASTが辿り着いたこのアプローチこそが、真のOMO実現への道筋なのかもしれない。
イオングループでは一緒に変革に挑んでくれる方を募集中です。
どんなことをしているのか気になる方は、お気軽にご連絡ください。カジュアル面談も実施しておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう!
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※掲載している所属・役職・肩書きおよび各種情報は、記事公開時点のものです。
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