イオン、即配200億円計画へ本格始動! 成長のエンジンは「裏方の完全自動化」

イオン、即配200億円計画へ本格始動! 成長のエンジンは「裏方の完全自動化」

2025/11/13

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この記事に登場している人

後藤 聡

Satoshi Goto

イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン ディレクター
ダイエー入社後、店舗運営・商品企画・営業企画・マーケティング・ECまで幅広く経験。
トップバリュ出向やICT領域での事業責任者を経て、2024年より現職。
現在はイオンスマートテクノロジーでOMO・EC領域の戦略立案・実行を担う。

    黄 振宇

    Huang Zhenyu

    イオンスマートテクノロジー株式会社 OMOディビジョン NSユニット シニアマネジャー
    2009年イオンリテール入社。店舗配属後、2010年よりイオングループ内の出向が続き、秘書部・社長秘書を経て、2012年から9年間中国駐在。スマホ決済、即配サービス、CRM、越境ECなどのDX業務のゼロベースからの構築を経験。2021年日本に帰任、イオンスマートテクノロジーに出向し、ネットスーパー、デジタルピッキング、即配サービスを担任。

    この記事を読むとわかること

    ・イオンが「即配200億円」構想を掲げ、Uber Eats連携など外部サービスを活用しながら急成長を狙う背景
    ・注文入力や会計仕訳、商品登録など“裏方業務”を完全自動化するための、AST(イオンスマートテクノロジー)の挑戦
    ・現場負担を生んでいた「注文手入力」「売掛処理」などを、ASPBとCloudPOSの連携でゼロにした仕組み
    ・裏側のシステム改革が、店舗スタッフの業務効率や顧客体験の質をどう変えるのか
    ・“現場起点のデジタル化”で、流通業の即配モデルを再定義するイオンの次なる一手

    「今すぐ欲しい」に応える即配サービス。その華やかなスピード競争の裏で、イオンは地道かつ着実な業務改革を進めている。Uber Eatsとの連携をテコに、注文処理から複雑な会計仕訳、煩雑な商品マスター登録に至るまで、すべてをシステムで完全自動化。店舗のレジ打ちや本部の手入力作業を劇的に削減し、2025年度には年間GMV200億円規模を目指すという。

    業務を変え、顧客体験そのものを変革する、イオンのOMO戦略の核心とは。知られざる"即配革命"の全貌を、開発を担うイオンスマートテクノロジー(AST)の後藤と黄に聞いた。

    【目次】

    即配200億円を支える4段階の戦略

    EC市場の拡大とともに、消費者の「今すぐ欲しい」というニーズが高まるなか、注文から数十分以内に商品を届ける即配(クイックコマース)サービス市場が世界的に急成長している。

    こうした背景のもと、イオンは現在、Uber Eatsをはじめとする外部プラットフォームを活用した即配事業の拡大を本格化している。

    顧客がUber Eatsなどのアプリでイオン店舗の商品を注文すると、店舗スタッフまたは配達員が商品をピッキング・パッキングし、配達員が30分〜1時間程度で配送するサービスだ(※)。商品の調達と在庫管理はイオンが担い、配送機能は外部プラットフォームが提供する分業体制となっている。

    即配事業の分業体制

    ※「配達員が店員に代わりピック作業から会計まで行うサービス/2024年中に「まいばすけっと」1,000店舗で展開」(PRTIMES)

    このサービスは急成長を続けており、2025年度には年間GMV(流通取引総額)200億円という野心的な目標を掲げる。

    しかし、その道のりは平坦ではない。即配サービスを手掛ける外部プラットフォームとの連携は、顧客利便性を高める一方で、店舗や本部には大きなオペレーション負荷を強いてきた。

    お客さまにとっては便利なサービスですが、店舗オペレーションは非常に複雑になります。Uber Eatsのシステムとイオンのシステムが連携していないため、店舗や本部のオペレーションコストがかかっていました。(黄)

    即配事業の拡大に向けてこれらの課題を解決すべく、ASTは4段階の戦略ロードマップを描く。

    即配事業拡大のロードマップ

    まず第一段階が「注文連携」。これはUber Eatsをはじめとする外部プラットフォームからの注文情報をイオンのASP/Bにある注文管理システムと連携させ、店舗でのレジ打ちから会計処理に至るまでを自動化するものだ。

    次の「商品連携」では、商品マスターの登録や更新、さらには在庫の連携を自動化することで、顧客が注文した商品が品切れとなるリスクを低減し、より最適な品揃えを目指す。

    さらに「Pick/Pack連携」によって、複数の即配サービスや自社のネットスーパーからの注文情報を一元的に管理し、店舗スタッフが行うピッキングやパッキングといった作業の効率化を図る。

    そして最終段階の「配送・出荷連携」では、イオンのネットスーパーにも即配という新たな選択肢を加え、顧客への配送網を一層強化していく計画だ。

    このうち、すでに注文連携は102店舗への導入を完了。商品連携は2025年12月の完成を目指して開発を進めている。まずは、国内で最大のシェアを持つUber Eatsとの連携から着手し、その仕組みを他のプラットフォームにも展開していく計画だ。

    レジ作業をゼロにする「注文連携」の仕組み

    最も大きな変革が求められたのが、ロードマップの第一歩となる「注文連携」だ。これが実現するだけでも、店舗と本部の業務は劇的に変わるという。従来、Uber Eats経由の注文は、店舗スタッフが1件ずつ手作業でPOSレジに打ち込む必要があった。さらに、本部での会計処理も複雑だった。

    注文連携による業務改善

    たとえばUber Eatsで150円で販売している商品が、店舗では100円の売価だとします。この場合、100円を売上、差額の50円を『その他営業収入』として会計処理する必要があり、これらを手作業で、しかも注文明細ベースで行っていました。さらに、POSレジで売上を計上する時点ではまだUber Eatsからの入金がないため、『売掛金』として処理する必要があります。その申請や承認にも手間がかかっていました。(黄)

    Uber Eats経由注文の会計処理(従来)

    この煩雑なプロセスをASTは、店舗の在庫管理基盤であるイオンの基幹システムASPB(Aeon Smart Platform for Business)と、iレジやモバイルPOSなどで採用しているCloudPOSを連携させることで自動化した。その核心となるのが「みなし注文」という仕組みだ。

    ASPBはもともと15分ごとに店舗での売価を自動更新しています。つまり、商品のJANコードさえわかれば、POSレジを通さなくてもほぼ正確な店舗売価を把握できます。Uber EatsからAPI連携で注文明細とJANコードを取得したら、ASPBを使って『レジを通した場合と同じ売上記録(=みなし注文)』を自動で作り出せるということです。

    同時に、Uber価格と店舗価格の差額も自動計算し、会計基準に合わせて売上高とその他営業収入に振り分ける処理まで完全自動化しています。これにより、売掛金の登録・承認といった本部の手作業もゼロになりました。(黄)

    注文連携の仕組み

    この「みなし注文」は、既存のASPBの仕組みを活用し、Uber Eatsからの注文をもとに"デジタルのレシート"を自動生成するようなイメージだ。これにより、店舗スタッフがPOSレジを操作する作業は完全に不要になる。1回の注文あたり約1分半かかっていた作業がゼロになるインパクトは大きい。

    1店舗で1日60件の注文があれば、約1.5人時分の作業が削減できます。この効果は大きく、導入した事業会社からは『もう店舗のレジを通さなくてすむ』と好評です。(黄)

    黄によると、この注文連携の仕組みによって、少なくとも人時売上対比で約2%の改善が期待できるという。

    もちろん、この画期的な仕組みの実現には、多くの苦労もあった。

    一番苦労したのは、売価のルール決めです。特にグラム単位で販売する生鮮品などは、Uber Eatsに登録している売価と実際の商品の売価が完全に一致しないことがあります。どの売価を正とするか、イオンの経理部門も巻き込んで相当議論を重ねました。(後藤)

    基本的にはイオングループ共通の基準が前提となるため、たとえば、これまでイオングループ経理が事業会社の経理に対して発信した通達に合わせるなどの工夫をしました。さらに、事業会社に対してはオペレーションに関して事前に綿密な説明も行いました。(黄)

    こうして、既存資産を巧みに活用した仕組みを構築したことで、イオンの即配事業は大きな一歩を踏み出した。現在、この注文連携システムはイオングループの2社・102店舗に導入され、今後さらに拡大していく予定だ。

    欠品注文の割合が71%の衝撃 - 商品マスター自動化の必要性

    次なるステップは「商品連携」だ。これもまた、即配事業の成長を左右する重要なポイントとなる。従来、Uber Eatsで販売する商品のマスター登録は、本部スタッフが基幹システムから手動でデータを抽出し、販売可否や商品画像などの情報を付加、Uber Eats側のシステムのフォーマットに合わせて手作業で登録するという、非常に手間のかかる作業だった。

    この手作業のため、商品マスターの更新頻度は月に1回、あるいは週に1回程度に留まっていました。これでは、日々の在庫変動に対応できず、お客さまが注文した商品が実際には欠品しているという事態が多発していました。ひどいケースでは、ある店舗で欠品注文の割合が71%に達したこともあります。100件の注文のうち71件で何らかの欠品があったということです。(黄)

    品揃えも課題でした。店舗ごとに品揃えは異なりますが、手作業では個店ごとのリスト作成は非現実的。結果として、一番小さな店舗の品揃えに合わせるなど、画一的で魅力の薄い商品リストになりがちでした。特に生鮮品やデリカは、店舗によって売価も規格も異なるため、Uber Eatsのアプリ上にはあまり掲載されていませんでした。(後藤)

    これらの課題を解決するため、ASTは商品連携システムの開発を進めている。ASPBが持つ最新の店舗別商品・在庫情報をもとに、Uber Eatsのフォーマットに合わせた商品カタログファイルや売価・在庫情報ファイルを自動生成し、Uber Eats側のシステムに自動連携する仕組みだ。

    商品連携システムの必要性

    この仕組みが実現すれば、本部での作業を9割削減できると見込んでいます。また、更新頻度を1日2〜3回に向上させることで、欠品件率の大幅な改善と販売機会ロスの低減、ひいては顧客満足度の向上につながると考えています。(黄)

    開発は現在要件定義の段階で、2025年11月の完成を目指している。ただし、事業会社ごとに商品選定のロジックが異なるという課題があり、その部分についてはRPAを活用した個社カスタマイズで対応する方針だ。

    自社即配で描く、シームレスに注文できる世界

    ロードマップのステップ3「Pick/Pack連携」では、Uber Eats以外の外部プラットフォームや自社ネットスーパーなど、複数の注文チャネルの情報を1つの端末で処理できるようにし、店舗スタッフの作業負荷軽減を目指す。そして最終段階のステップ4「配送・出荷連携」では、「自社即配」の実現を見据える。

    外部プラットフォームの配送力も活用しつつ、我々のネットスーパーにも即配サービスというオプションを付加することで、お客さまの利便性をさらに高めます。現在、ダイエーとUber Directを活用したPoCを進めており、実現すればネットスーパーで翌日・当日配送だけでなく、1時間後の配送も可能になります。(黄)

    クイックコマース市場は右肩上がりで成長しており、リアル店舗を普段利用しない顧客層へのリーチも期待できる。一方で、ネットスーパーはリアル店舗の顧客が併用するサービス。後藤によると、両者は顧客層が異なるという。

    自社即配をネットスーパーに組み込むことで、赤字体質や、特定の時間枠の注文が一定数に達するとそれ以降の注文を受け付けない『キャップ制』といったネットスーパーの課題を解決し、リアル店舗のお客さまの満足度向上にもつなげたい。最終的には、ネットスーパーだろうが即配だろうが、お客さまが欲しい商品を欲しいタイミングで、媒体を問わずシームレスに注文できる世界を目指します。(後藤)

    即配市場の拡大は確実だが、その成長を持続可能なものにするには、オペレーションの効率化が不可欠だ。2%の人件費削減、71%の欠品件率改善、9割の本部作業削減──こうした地味だが確実な効果の積み重ねが、200億円規模の事業拡大を支える基盤となっている。


    イオングループでは一緒に変革に挑んでくれる方を募集中です。

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